Tear drops.

四十二粒。 ページ49

.




その日の夜のこと。





夜ご飯を食べ終わり、お風呂を済ませ、
だらだらとふたりでソファーに掛けて
おしゃべりして。





ひとしきり笑って静かになり、
風磨が私の髪を触って遊び始めた頃。















「...あのね、」










意を決して私は風磨の方を向いた。













「この前の話、なんだけど」









そういえばわかりやすく口角を引き締める。











「...私、」




「ちょっと待って」









いきなり遮られて驚くも
風磨の表情を見て理解する。













「...A。

俺と、結婚してください」














“貴方が気になったから
話しかけてる。”


“俺と付き合って”


“キス、してもいい？”


“Aが嫌って言っても彼女にするよ”













“何よりも、Aを守りたいんだよ”

















「...はい。」













そう微笑んだ瞬間、風磨がぎゅっと、
強く抱き着いてきて。











「本当に？いや本当だよな、
あ、疑ってるわけじゃないんだけど
ちょっとやばい、嬉しすぎるどうしよう、」















心の声漏れてますけど？なんて
今日は茶化さないでおく。













女優として、私は泣けなくなってしまった。


今日の撮影では何とかうまくいったけれど、
きっとそれも相手が風磨じゃなかったら
駄目だった。


それに...あのシーンにカットがかかった瞬間、
この先これを超えるシーンは撮れないと
わかってしまった。











私は、咲坂Aを終えたのだ。













そして...ひとりの女性として考えたとき、
風磨のプロポーズを断る理由なんてなかった。









風磨のファンにショックを
与えるかもしれない。







でも...どんなことがあっても、
風磨は人を惹きつける人だから。



風磨が言ってくれたように、
私は私の幸せを追求してみようと思うーー。




.

お知らせ+α→←四十一粒。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す