Tear drops.

二十二粒。 ページ22

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「いろいろ、本当にいろいろ、
ありがとうございました」




「ううん。
俺こそ突然連れ出しちゃってごめんね？」













お得意のアイドルスマイル。




今日は中島さんのおかげで
有意義な休みになった。


感謝したいくらいだ。




もちろんお互い芸能人という立場として
堂々とすることは出来なかったけど、
何よりあの店主さんがまた来てと
私に言ってくださったことが一番嬉しかった。



















「風磨のことで悩んだらいつでも連絡してよ。
あ、あと今日のことは風磨には内緒ね？」












サラッとウインク。


はい、と答えると満足そうに笑い
白い車は東京の街を走り去っていった。

















...中島さんは、本当に菊池くんが大切なんだ。



だからこそ、傷つけないで欲しくて
私と話しに来た。



そして、菊池くんも中島さんが大切。














その思いを私は、無駄にできない。

























「もう、大丈夫です。
監督にもよろしくお伝えください」














心配していたマネージャーに電話を入れると、
とりあえずほっとした。





マネージャーは
今まで仕事に穴を開けたことの無い私の
突然の変化に相当驚いていたみたい。







でも私だって、
恋愛でこんなに自分が変わるとは
思いもしなかったの。

















あの女子アナは、行動によらず
一途ないい子だ。




グダグダと半端な関係を続ける私より、
きっと菊池くんに合っている。





そもそも私みたいな無愛想な人間を
好きと言ってくれたこと自体、奇跡だ。












...奇跡、だ。













「だけど、風磨」











一人暮らしの2LDKに寂しい声が響き渡る。










「好きだったなあっ.....っ.....」











今だけは。









風磨と呼ぶのをゆるして。



想いを口に出すことをゆるして。



相手役が違う人だったらと思うことをゆるして。













私たちが芸能人じゃなかったらと
恨むことを、ゆるして。

















それは、


久しぶりに感情の伴った涙だった。




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