Tear drops.

十三粒。 ページ13

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硫星の泪の撮影が始まってから
一ヶ月が経った。







順調に撮影は進んでいて、
ちょうど半分くらいまで撮り終わったところ。






相変わらず涙はするすると出てくるし、



相変わらず
風磨(そう呼べと言われたんだよね)は
ちょっぴり強引だけど優しいし、



相変わらず
自分の気持ちはわからないままで。












変わったことといえば、
あれからよく風磨の家に行くようになった。



けれどそういう行為をすることは
意外にもその後全くなくて、


いつもどうでもいい話をするだけで帰る。






中島さんがバラエティ番組の収録で
すべってたとか、


中島さんが何でもないところで転んでたとか、


中島さんがドラマの撮影のことを
気にかけているとか。








内容は中島さんばかりだけれど、
それはどれも送ってもらった時の彼とは
結びつかないから面白い。




きっと、一番の仲間なんだろうな。




最高のライバルだけれど、最高の仲間。















「グループっていうのがいいよね」



「ああ、Aは一人だから？」



「悩み相談できる人もいないし、
ライバルとかも...特に考えたことないし、
高めあえる相手がいないんだよね」












そこまで言ってハッとなる。



こんな話、今この場でするべきじゃなかった。







せっかく楽しい気分で盛り上がっていたのに。














「ごめん、忘れて...」



「ライバルになれるかはわかんない、けどさ」



「え？」



「頼って。ってか、頼りなさい」















...うわあ。



なに、その優しい言葉。







...泣きそうなんだけど。







久しぶりの自然な涙が満ちる感触は
風磨によってあっさりと引き出された。



戸惑いながら、一応堪えておく。












「ありがとう。」















風磨は、私が今まで出会った中で
一番魅力的な人だ。




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