美少年の紅一点は、関西からやって来ました。2 (ページ8)

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渡瀬said

その後は、何があったのかよく覚えていない。

覚えているのは，変わり果てた妹の姿とその背中を刺さり続ける兄、その隣で泣きじゃくる母親の姿，電話に向かって怒鳴り続ける父親の姿だけだ。

あの日から，妹は学校に行かなくなった。

笑わなくなったし、話さなくなった。

ご飯も、あまり食べなくなった。

大好きだったゲームも一切しなくなった。

兄はそんな妹を心配して大学を退学、地元の会社に就職した。

母はそんな兄の姿を見て、週5日午後のみに入れていたパートを週2日フルタイムに変更して，妹との時間を増やした。

父は変わらず働いているけど、もう同じ思いをして欲しくないと思っているのか、妹を学校に行かせるのだけは拒んでいる。

私は、そんな家族が嫌で嫌でたまらなかった。

全てを妹中心に考えて、私のことなんて一切見てくれなくなった。

家族が家族じゃなくなった。

そんな家族に嫌気がさして，私は一人暮らしを始めた。

一年前に一人暮らしをしたいと言った時は全力で止めてくれた父も、「好きにしなさい」としか言わなかった。

勿論止められなくて良かったけど、1年でこんなにも人が変わってしまうことに驚いた。

でもそれで踏ん切りがついて、私はスパッと一人暮らしを始めることができた、、、んだけど…………

『ただいま………』

兄「A、遅い。美春が待ってんだから急げよ。」

『…………ごめん。』

私は一人暮らしを始めてからも週に3回のペースで実家に帰って来ている。

ほんとは帰りたくなんかないけど、呼び出されてしまうから仕方ない。

重い足取りでリビングへ向かうとそこには，ソファで横たわっている妹とその妹の背中を刺さっている母の姿があった。

またか、そう思いながらも私は妹に声をかける。

『美春，遅くなってごめん。大丈夫？』

妹「別に呼んでないけど。」

母「私が呼んだのよ。だって美春ちゃん具合悪いのに、お姉ちゃんだけ知らない訳にはいかないでしょ？？」

始まった。

いつもそうだ。

お母さんは私が一人暮らしを始めてから事あるごとに「美春ちゃんの様子が変なの！！」と連絡をして私を呼び出す。

もちろん，対して調子が悪いわけではない。

仕事があるからと断ると、「美春ちゃんよりも仕事をとるのね」と泣かれる。

正直もう限界だった。

けど，そう感じていたのは私だけではなかった。

そのことに、私はまだ気づいていなかった____