星屑をつかまえて (ページ7)

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キラキラの正体はページ7

『花火大会？』

「そう！今日この近くであるの！」

収録後、帰る準備をしながらそう教えてくれた先輩はどことなくわくわくしていて、うれしそうだった。

「あ～、あれ今日だっけ？」

隣にいた中村さんや、他の人たちも気付いたように声を上げた。どうやら知らないのは私だけだったみたい。

『中村さん知ってたんですか？』

「俺だったら知らないだろうみたいに言うな」

「打ち上げ数も多くて、この辺りでは有名だよ！
　中村さん、Aちゃん連れてってあげれば？(笑)」

「バカ、変なこと言うんじゃないよ」

へぇ、この人は誰かに連れてってもらうのか。そう思ったけれど深くは聞かないでおこう。目をキラキラさせながら、じゃあまたねと、手を振って出て行く先輩は、いつもより倍増しで可愛く見えた。

「あいつ…、次会ったら問い詰めてやろ」

あ、中村さんは聞いちゃうタイプ

『わ…』

建物を出れば、駅から続く通りは沢山の人で溢れていた。いつもとは違う人の熱気で身体の体温が一気に上がったような気がして、少し眩暈がした。

「すげえな」

あまりの人の多さに隣の中村さんも圧倒されているようで、眉間に皺をよせて人の波を眺めている。

『ふふふ』

「何笑ってんだ」

『いや、中村さん、眉間すごいことになってる(笑)』

「…暑いんだよ」

『…ですね(笑)』

私は少し笑いながら、変に意地っ張りな彼と同じように目の前の群衆に目線を向けた。
目の前には、綺麗に浴衣をきて、並んで歩く女の子たち。さっきの先輩と同じ、みんなキラキラしていて楽しそう。
一体何がそんなにキラキラさせるというのか。

思えば私には、これまで縁がない世界だった。
両親とも忙しくて、あまり遊びには行けなかったし、高校生からはもう声優の仕事を始めていて、仕事で行けなかったり、家にいることが多かった。

別にそれを気にしていたわけではない。
人混みは苦手だし、暑いのも苦手。
そもそも、今更花火大会に行きたいなどと、胸ときめかせて言えるような歳でも、もちろん、性格でもなかった。

でも少し、ほんの少しだけ…

『…いいな…』

「え？」

『………え？あ、いや！』

やっっば、無意識に声に出していた。

『あ！駅！混雑してるかも！私、帰りますね！』

「A、」

とにかくこの場を去ろうと慌てて捲し立てる私の言葉を、彼の静かで、低い声が遮った。

「……花火、どこかで見てく？」

『はいっ…！』