彼は、主治医。

＊君が、主治医。 ページ9

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「いった…」


小さく呟いた声は誰にも届くことはなく、

空を走る機体の騒音に消えていった。




テイクオフの時から感じていたお腹の違和感。




これから始まる長いフライト、

不安はあったけど緊張感からか

なんとかいつも通りに仕事をこなして...




15時間を超えるフライトもいよいよ着陸間近になった今、

じわじわと強くなる痛みにギャレーでお腹を摩る。





「当機は、まもなく...」



なんて着陸態勢に入ることをアナウンスする

チーフの声に席に着いて





「(あとちょっと...がんばれ自分...)」


自分に言い聞かせ、奮い立たせる。






「お疲れ様でした。」


フライト後のブリーフィングを終え、

ロッカールームで着替えるけど、

緊張感から解放されたからか

立っていられないほどの痛みに蹲る。






「は！？A大丈夫！？！？！？」


同じく勤務終わりの同期が駆け寄ってくるけど、

返事もできないくらいに、


「(腹がいたい…)」







なんとか痛みの波が落ち着いたところで立ち上がり、


「このまま健人くんの病院いきなね！？絶対！！」


念を押す同期に別れを告げ、電車に乗り込む。




「(座りたい…)」



案の定、電車は満員で座れず…


ただでさえ長時間の勤務に疲弊しきった身体に


再びじわじわと強くなってきた痛み。



「(このままどうなっちゃうのかな...けんと...)」



こんなときはどうしようもなく健人に会いたくなる。





「(っ…)」


治まるどころかさっきとは比にならない痛みに




「(も...無理、、)」




つり革と同時に、意識も飛ばしたらしい。

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