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Shori side
風磨くんが部屋を出て行った後も、俺は開かないドアの前で考えていた。
このドアの奥には何があるんだろう。それからあの薔薇の絵は、一体何を意味しているんだろう。
「勝利。少し座って休んでなよ」
健人くんに声をかけられても、俺はドアの前から離れなかった。
「あのさ。今までと部屋の構造が違うと思わない?」
俺の言葉にマリウスは「どういうこと?」と首を傾げた。
「今までは、部屋を抜けたら部屋か廊下があって、どんどん奥に進んでいくだけのような気がしてた。永遠に部屋と廊下があるみたいだった。でもさっき、ガスの出ていた部屋はキッチンだったし、その先の部屋を出れば廊下。それからエントランスのホールと食堂。あとはここ。応接室」
「この屋敷の構造が、現実に近づいてるってこと?」
健人くんの言葉に、俺は頷いた。
「キッチンを抜けたあと、あの絵以外は変わった化け物も仕掛けも出てきてない。だから、もしかしたら…ここから抜け出せるのも近いんじゃないかなって、思って…」
威勢よく話し始めたものの、1番言いたかった言葉は結局尻すぼみになって消えた。
気休め程度の考えだってことはわかってる。それでも言葉にすることで、自分に言い聞かせることで、安心できる気がしたのだ。
「そうだね。もうすぐ抜け出せるかもしれないよね」
マリウスが少しだけ表情を緩めて頷いてくれた。ガチャンと扉の開く重たい音がして、風磨くんと黒猫が応接室に戻ってきた。
「持ってきたよ」
「ありがとう」
風磨くんは酢のボトルと塩らしいものが入った瓶をソファの近くの床に置き、窓際にあった空の花瓶を持ってきて床に腰を下ろした。
「本当に落とせるのかな」
「やってみるしかないっしょ」
淡々とそう返した風磨くんは、花瓶に酢と塩を入れ、その中に鍵をぽとりと落とした。
[あの絵が気になるんだろ?]
急に話しかけられ、俺は驚いて黒猫を振り向いた。
[みんな気になってるよ。あの絵が何を意味するのか。ぼくと一緒に見に行くかい?]
ついてきな、と言わんばかりに、黒猫は応接室の扉に向かって歩き出した。
「どこ行くの?」
黒猫の後を追おうとして立ち上がると、聡に声をかけられた。
「やっぱりあの絵が気になるんだ。もう1回見てくる」
健人くんの止める声には聞こえなかったふりをして、俺は慌てて応接室を飛び出した。
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みみ(プロフ) - 遅くなりましたが昔コメントしたらんです。再開嬉しいです。やはりお話は大好きなのでがんばって下さい。 (2020年2月11日 17時) (レス) id: 84d134d2ea (このIDを非表示/違反報告)
Emma(プロフ) - さくらさん» 毎日チェックしてくださり、ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年12月1日 21時) (レス) id: c1561dc037 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - 毎日更新ありがとうございます。楽しみにしています。 (2019年11月30日 19時) (レス) id: 206be9d177 (このIDを非表示/違反報告)
つばき(プロフ) - yukineさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります…! (2019年11月26日 22時) (レス) id: c1561dc037 (このIDを非表示/違反報告)
yukine(プロフ) - めっちゃ面白かったです!次の更新も楽しみにしてます! (2019年11月26日 19時) (レス) id: b95332937f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Emma | 作成日時:2016年2月3日 23時