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ドアの先は何の変哲もないただの部屋。電気のスイッチを押すと、天井の大きなシャンデリアに明かりが灯る。
向かい側のドアの近くには観葉植物がいくつかあって、俺らの入ってきたドアのすぐ横には、オルガンを弾いている女の人の絵が飾ってあった。
聡が入ってきたドアのドアノブを捻るが、ガチャガチャと音がするだけで、ドアは開かなかった。
「えっ…鍵が閉まってる」
「前の道には戻れないってことなのかな…」
なにかヒントはないかと、仕方なく部屋の中を少し見て回る。
ふと、隣でしゃがんでテーブルの下を覗き込んでいた風磨くんが動きを止めた。
「どうしたの?」
眉間にしわを寄せ、薔薇をまじまじと眺めている風磨くんは、おもむろに花びらを一枚、ぷちっとちぎった。その瞬間、風磨くんは短いうめき声をあげ、痛みを堪えるように顔を歪めて紫色の薔薇を床に落とした。
「どうしたの?トゲ刺さった?」
紫色の薔薇を拾い上げながら尋ねると、風磨くんは首を横に振る。そして薔薇を受け取って立ち上がりながら言った。
「この薔薇、俺らの体に連動してるみたいなんだよ。花びらをちぎると体に痛みが出る」
「え?ほんとに?」
マリウスが薔薇の花びらをちぎろうとするのを、慌てて風磨くんが止める。
「やめろちぎるな。せめて指でちょっと傷つけるくらいにしとけ」
マリウスは何もせずに薔薇をポケットにしまった。対して聡は、じっと緑色の薔薇を見つめたあと、その花びらに軽く爪を立てる。
「っ……」
顔を歪め、聡はびくっと手を引っ込めた。
「な?」
風磨くんと頷き合う聡。健人くんがポケットにさしていた薔薇を手に取り、眺めながらぽつりと言い放つ。
「じゃあ、この花びらが全部散ったら……」
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みみ(プロフ) - 遅くなりましたが昔コメントしたらんです。再開嬉しいです。やはりお話は大好きなのでがんばって下さい。 (2020年2月11日 17時) (レス) id: 84d134d2ea (このIDを非表示/違反報告)
Emma(プロフ) - さくらさん» 毎日チェックしてくださり、ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年12月1日 21時) (レス) id: c1561dc037 (このIDを非表示/違反報告)
さくら - 毎日更新ありがとうございます。楽しみにしています。 (2019年11月30日 19時) (レス) id: 206be9d177 (このIDを非表示/違反報告)
つばき(プロフ) - yukineさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります…! (2019年11月26日 22時) (レス) id: c1561dc037 (このIDを非表示/違反報告)
yukine(プロフ) - めっちゃ面白かったです!次の更新も楽しみにしてます! (2019年11月26日 19時) (レス) id: b95332937f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Emma | 作成日時:2016年2月3日 23時