cherryblossom 第３章 (ページ11)

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いるはずのない人ページ11

「A、どうした？」

……なんで？
なんでここにいるの？

「えっと……」

ここにいるはずのない人に声かけられて、
すんなりこの状況を受け入れられない。

「あんた、誰？」

睨みながら、挑発するような男の言葉。

「そんなことより、手を離してくれない？
Aが痛そうにしている」

男の質問には答えず、
淡々とそう言う。

「あんたには関係ない」

「関係があるって言ったら？」

「は？なんで？あんたがAちゃんの彼氏とでもいうの？」

「そうだって言ったら？」

「「えっ？」」

男と私の驚いた声が重なった。

…そうか。
この状況をどうにかしようとしてそう言ったんだ。

都合のいいことに、男には私の声は聞こえなかったようで、
視線は声の主に向けられたまま。

「だから、手、離してくれない？
離さないと、何するかわからないよ？」

言葉は感情がこもってなさそうなのに、
冷たい目。

「っ――」

その目のせいか、私の腕をつかむ力が弱まって、
今だ！と言わんばかりに男から離れる。

「A、行くぞ」

そんな私の腰を慣れた手つきで引き寄せる。

「ちょっと、そこまですることないじゃないですか」

男に聞こえないように小声で言う。

「付き合っているように見せないとだろ」

さらに私を自分の方へと引き寄せた。