将来の夢。 ページ29
桜が散り、青い木々が生い茂り。
夏が来る。
「Aの今の成績だと、このレベルの高校は辛いと思うが」
「それでも、この高校がいいんです」
食い気味に答えれば、ううむ。と腕を組んだ先生。
「3年になってからもテストも授業態度も意欲がよく見えるんだがなあ…判定としては厳しいな」
どうしても、ここの高校がいい。そう、強く願う理由があった。
「なんでここがいいんだ？」
先生の言葉に、胸を張って答えた。
1年前の私なら答えられなかった“将来の夢”がこの胸に灯ったんだ。
「いつか、プロの世界で皆と会うために必要な場所なんです」
「あっはは！大きく出たなあ。ちゃんと調べたのか？」
「はいっ」
お姉ちゃんに相談して、取り寄せたパンフレット。
その中に強豪サッカー部がいる、と書かれたこの高校はある条件下であれば大学の推薦が貰える。
その大学こそが、私が目指したい場所だった。
パンフレットを先生に渡せば、そうか。と涙ぐんでいた。
「まさか、大学まで見据えてるとはな、あのAが」
「えっへっへ！」
国内で名高いその大学は、プロとして活躍する選手のすぐ側で基本的なマネージャーの仕事を覚えることができて、なおかつ。
ちゃんと資格も取れるんだ。
大好きなサッカーを傍で見れる。
大好きな人や仲間と、もう一度夢の続きを追いかけることが出来る。
「よし。そうと決まれば、課題も増えるがいいか？」
「頑張ります！」
「よおし！」
先生に励まされて、やる気は十分。
課題に追われて、試験に追われて。
推薦で高校が決まっているサッカー部員の大半は、朝から晩までひたすら練習に駆け回っていた。
「行きたい高校決まったんだってな」
「あ、鬼道さん」
図書室で教材を手に取っていれば、声を潜めてきた鬼道さん。
本をしまい、一緒に廊下へと出て教室へと戻る。
「まだ修也には内緒なんだ」
「言わないのか？」
不思議そうな鬼道さんに、うん。とけろっと返事をすれば…そんなもんか？と小さく呟く声が聞こえた。
そんなもんじゃない？
「晴矢とも志望校違ったし、皆施設から行けるところだったり、寮に移るんだって」
「Aもその方面なのか？」
階段を登っていれば、立ち止まった鬼道さん。
危ないから止まらないで欲しいな。
「ううん、私はここから通える所。だけど、ちょっと判定悪くて…へへ」
「それで部活もあまり来れないんだな」
頷けば、鬼道さんは頑張れよ、と一言だけ残して階段を駆け上がった。
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守羽(プロフ) - 豪炎寺さとみさん» コメントありがとうございます！もう少しだけお付き合い頂けたら嬉しいです…！ (2022年10月10日 16時) (
レス) @page44 id: d0d25ba477 (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺さとみ - 終わっちゃうんですか (2022年10月10日 13時) (レス) id: 507e2dc598 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：楸 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hisagi/
作成日時：2022年10月2日 22時
