鉄塔広場。 ページ23
目が覚めて、携帯を確認して。
リビングへ行けば鼻歌を歌ってご機嫌なお母さんがいる。
「おはよう」
「ん、おはよ」
顔を洗ってからもう一度戻れば、テーブルの上には珈琲。
あったかい珈琲をちびちびと飲んで時計をちらり。
修也が来るにはまだちょっと早い。
朝ごはんに適当にパンをオーブンに入れて温めをおして、何となくテレビをつけて眺めては、浮き足立った心に平静を装って。
「A、修也くんに渡すものちゃんと持っていくのよ？」
「あ！」
そうだった。とトーストを食べながら、どこに置いたかな。と記憶を辿って……。
もう一度携帯を開いて、メールボックスから修也を見付けて
念入りに時間を確認して、ちょっとだけ身支度なんて気合い入れてみたり。
とたとたと走り回り出した私に、お母さんがくすりと笑うのが聞こえた。
「寒いからちゃんとあったかい服装にしてね」
「ん〜」
クローゼットからお気に入りのポンチョを出して、ポシェットにハンカチと携帯とお財布を詰め込んで。
しっかり防寒対策をして、マフラーを最後に巻き付けて。
玄関の鏡の前で一生懸命前髪を治す。
お姉ちゃんが居たらアイロンでくせっ毛なおしてくれるのに。
いい加減自分で治せるようにならないと。
チャイムの音が響いて、自然と頬が緩んだ。
扉を開ければ、そこにはもこもこでちょっと寒そうにマフラーに顔を埋めた修也が立ってた。
「おはよ」
「おはよう！修也っ」
ブーツを履いて、お母さんの居るリビングへ向かって声をかけた。
「いってきます！」
「はーい、行ってらっしゃい」
小さく会釈した修也と、当たり前のように手を繋いだ。
目的地なんて決まってないけど、慣れた道を歩き出した修也に何となく、鉄塔広場に行くのがわかった。
「さむむ」
冷たい風に震え上がれば、隙間もないくらいぴったりとくっついて、ぶつかりながら歩く。
得に話すこともなく、ただ風の音が頬をいじめていく。
見上げればどこまでも青く澄んだ空に、優しい太陽がいて。
「転ぶぞ」
「おとと、」
ふらついた手を引いて、ちょっとだけ笑う修也。
当たり前になった距離感に、付き合っている事実が突然胸をわしゃっと締め付けてくる。
出会って2度目の冬。
付き合って初めての冬。
特別な、冬。
「わ、誰もいないね」
「だろうな」
鉄塔広場につけば、人っ子一人居なくて。
流石に円堂もいなかった。
自販機で、あったかい紅茶を買えば、隣でくしゃみをしながら修也はお茶買っていた。
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守羽(プロフ) - 豪炎寺さとみさん» コメントありがとうございます！もう少しだけお付き合い頂けたら嬉しいです…！ (2022年10月10日 16時) (
レス) @page44 id: d0d25ba477 (このIDを非表示/違反報告)
豪炎寺さとみ - 終わっちゃうんですか (2022年10月10日 13時) (レス) id: 507e2dc598 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：楸 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hisagi/
作成日時：2022年10月2日 22時
