自由な君と。- 豪炎寺修也 - ep8 (ページ50)

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海と花とお別れ。ページ50

日本での影山さんのお葬式の日程を、響木さんから教えてもらった。
鬼道さん、佐久間さん、不動さんと一緒に呼び出しをされて。

「イタリア代表の方でも小規模だが行うそうだ。A、参加してくるか？」

鬼道さん達を見れば、好きにしていいと、物語っているようで。

「鬼道さん達は？」

「俺達は……」

「俺はしねえよんなもん」

不動さんがそう言い切り、ふん。と頭の後ろで腕を組んだ。
佐久間さんは鬼道さんをちらりと見てから、日本に戻った時に挨拶に行こうと思う、と肩を竦めた。

帝国の皆と、そんな言葉が聞こえた気がした。

「俺もいいです」

「そうか、A。お前はどうする？」

もう一度、響木さんに聞かれて考えた。
オルフェウスの皆と参加するのは、少しおかしい気もするけれど…。

ううん、

「私もいいです」

そうは言ったものの、皆が気を使ってくれて
日本の葬式に合わせたその時間に、秋達が1人の時間を作ってくれた。

「いいって言ったのに」

「全くだな」

「けっ」

「考えることは同じだったか」

砂浜への道。
独り言に反応されて振り向けば、鬼道さん達3人が居た。

部屋にいるのも気が引けて外へ出れば、
この3人と考えが同じなのはちょっとなあ、なんて思って笑った。

「A、それもしかして」

「うん、海に流そうと思って」

お花屋さんで買ってきた花束を佐久間さんに指さされた。

夕日に染まる海を何となく、4人で見詰めていた。

もう二度と、会うことは無い。
いい思い出だってなかった人だ、

それでも。

誰かの死に直面する、それだけで精神は磨り減ってしまうものなんだ。

「鬼道さんも流しますか？」

「…一輪もらおう」

色とりどりの花から一輪だけとり、茎を少しだけ折った鬼道さんは海へと向かう。

佐久間さんにも花束を向ければ、ありがとう、と一輪抜いていく。

不動さんの元へ向かえば、素直に一輪受け取り重い足取りで海へと向かっていく。

渚へと腰を下ろした不動さんが、同じように茎を折って
水面へと優しく、丁寧に花を下ろした。

漣と共に海へと呑まれていく花。

佐久間さんも、そっと砂浜に花を置いた。
波が花を受け取るように、優しく。

不動さんの置いた花と連れ立って、一瞬で消えていった。

まだ、花を手放せない鬼道さんの隣で
残った花を優しく水面へ浮かべていく。

荒々しい波に呑み込まれて沈んでいく花々を見詰めていれば

鬼道さんもそっと、花に別れを告げた。