自由な君と。- 豪炎寺修也 - ep8 (ページ40)

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ミケ。sideフィディオページ40

みんなに一声かけないと。そう言いながら、階段を駆け下りるミケの後をゆっくりと追いかければ、食堂で皆に引き止められて困り果てていた。

アンジェロに抱き着かれて、もらい泣きしそうになるのに
瞳は潤み、その緑色の瞳が揺らぐのに。

涙は零れないまま。

思い出せば、影山監督の事も含め、泣きそうに1人で食堂にいる姿を何度も見た。

早朝から、ランニングして帰ってくる姿も、

1人グランドでボールと戯れる姿も。

それでも、いつだって泣きそうに笑っているのに
涙はこぼれないから、ミケは強いんだって改めて胸に痛みが走る。

「あの子はイナズマジャパンに帰るべきなんだ」

「キャプテン…？」

遠目に、囲まれたミケを見詰めたキャプテンへ近寄れば見上げて目があう。そして、ミケを目を細めてみつめた、

「あの子の家族…いや、幼馴染達に会ってきたんだ。あの子は眠り姫なんだと言われたよ」

「眠り姫？」

「ああ。どこでも寝てしまうから眠り姫、なんて理由だと思ってたら違ったよ」

どこでも寝る？

「ミケが寝てる姿なんて見たことないよ、朝だって早くから支度してくれていたし。夜も皆の事が終わってからだった…」

眉をひそめ、キャプテンはため息をついた。
いつだって、全力でマネージャーの仕事をしてくれていた、
空いた時間はすぐに監督の元へと走っていくのを皆が見てた。

「眠り姫は…夜中に何度も目が覚めるんだそうだ、うなされて、そうして家族の気配を感じる昼間に目を閉じていたらしい」

「うなされて…？そんな雰囲気何も……」

ミケをみつめた、
朝は早くて、夜は遅い。

ご飯も、誘わない限り皆とは絶対に食べなくて。

俺も、待っていれば一緒に食べてくれて……、

「キャプテン、もしかしてミケは…ずっと？」

そんなミケに、俺は…俺達はそばにいて欲しいって声をかけた？
でも、言ってくれればよかったじゃないか、仲間だって言ったろ

込み上げてきた、小さな怒り。

気付けなかったことへの悲しみ。

「でも、それならイナズマジャパンに居たって同じですよね。家族は日本に居るなら…」

同じ仲間なら、俺達だって。

「彼女が落ち着く場所がある…だからここまでイナズマジャパンと一緒に世界一を目指して来てるんだろう」

ブラージに頭を撫で回され、ぼさぼさになったミケが笑う。
ふと、門の方を見詰めて、目を凝らして…。

その一瞬、今まで見た事のないくらい

瞳が輝いて、揺れて、溢れ出した。