自由な君と。- 豪炎寺修也 - ep8 (ページ19)

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優しい檻。ページ19

度々、円堂大介さんを死に追いやろうと
必要にその命を狙った人がいた。

そうして、不幸にも家族で出かけていた私達の車が

円堂大介さんを狙った車と衝突した。

それが、4歳の出来事。

「大介さんを憎むなとは言えない、だが…」

「鬼瓦さん、影山さんが私に言ったんです」

オルフェウスにと提案した影山さんは
私に言ったんだ、私を苦しめた元凶へ復讐をしないか、と。

「私のことをたくさん、苦しめてたのは円堂のおじいちゃんでも、影山さんでもないんです…」

握りしめ、しわくちゃになった書類から手を離して顔を上げた。

「探し出してください、叔父と叔母を」

「どういう事だ？」

鬼瓦さんに向き合い、私を苦しめ続けた悪夢を話した。

「物心ついた時から、お父さんとお母さんに、たくさん…たくさん嫌なことを言われてきました。お酒とタバコの匂い、冷たいお湯。
笑ってる姿も怒ってる姿も……存在その物が恐怖だったんです」

目を、丸くした鬼瓦さんに精一杯笑いかけた。

「エイリア学園に行くことになったのは、育ての親から放棄されたからですよ…」

おそらく、口止め料として私名義に大金が入ったこともあって
引き取ったんだろう、けれど……通帳紛失ってアホすぎない？

「嬢ちゃん…何だってもっと早く」

影山さんは、初めて会った時から気付いていたんだろうか

円堂大介さんを追いやるために、巻き込まれた私達家族の事を。

まだ、小さくて何も覚えていない私をどんな風に見ていたんだろう。

「このデータは預かっててください。スペアキーは持って帰ります」

ストラップを外して、鬼瓦さんへ渡した。

これからどうするんだ、そう視線を逸らした鬼瓦さん。

少しだけ、考えた。

「全部は無理でも、影山さんの事を理解してみようと思います」

何者からか私を守ろうと、庇護下に置いた影山さん。

それはそうだろう、イナズマジャパンという、円堂大介さんの孫がいる円堂の隣に、こんな過去を持った私が居たら。

聞き方、言い方1つで円堂を恨みかねない爆弾だ。

そうしてその何者から接触をされないように
勝手に動き回らないように、影山さんの周りを変に嗅ぎ回らないように

イタリア代表という寮の檻に閉じ込めたんだ。

鬼瓦さんへ、深く頭を下げてイタリアエリアに戻る。

バスに乗り込み、窓へ頭を押し付けた。

失った家族への記憶はきっと思い出せない。
深く根付いた悪夢だけが今もここに。