自由な君と。- 豪炎寺修也 - ep8 (ページ14)

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ハイタッチ。ページ14

両手を、優しく包んでくれる手が

修也だった。

いつだって、手を引いて繋いで歩いてくれる大好きな修也の手。

「〜っ修也、」

立ち上がって、抱きつこうとして

「ミケ！大丈夫？」

目を覚ました。

夢でもいいから会いたいと、確かに言ったけれど。
これは、これでとても切ない。

「ごめん、お待たせ」

一哉くんが駆け足で来てくれて、フィディオに行ってらっしゃいと背中を押された。

「一哉くん！」

「久しぶり、元気だった？」

わっ！と抱きしめられて、流石アメリカ、と肩に腕を回した。
ちょっと修也以外のこの距離感恥ずかしい、と離してもらえば

あの日の一哉くんと同じ、笑顔だ。

ちょっと凛々しくなった？

「オルフェウスのジャージ、すごい違和感だ」

「ふふ、一哉くんのユニコーンのジャージは似合ってるね」

軽く挨拶をすれば、目を細めてとても柔らかい穏やかな表情で
話してくれた。

「実はさ、俺……手術するんだ」

影山さんから聞いたってことは墓まで持っていこう。

黙って頷けば、知ってたかとちょっと笑われたので、
ぎこちなく笑って誤魔化せば、困ったような一哉くん、

「必ずサッカーは続ける。でも、ミケとの約束は守れそうにないや、」

ごめん、と肩を竦めて、悲しそうな顔。

「一哉くん！両手！」

「え？だから、願掛けは、」

「いーから！両手！」

「うええ、」

両手を上げた一哉くんは、困ったなと眉を下げたまま。

廊下に響いた、ハイタッチの乾いた音。

「〜った、ミケって結構力強いよね」

「願掛けした？ちゃんと、願った？」

一哉くんを見上げれば、柔らかく笑って願ったよと言われた。

ほっとした瞬間、

「ミケと豪炎寺の未来に」

何で、この人は。

サッカーを続ける決意は未来へ紡げたのに

秋との未来は紡いでくれないの。

「私は！10年先の未来の、一哉くんと秋の未来を願ったよ」

離れようとした、一哉くんの手をぎゅっと掴んだ。

サッカーと同じくらい、秋の事諦めないで。

なんて、他に励ます言葉がわからなくて。
一哉くんの全力のプレーに答えられたイナズマジャパンのみんなと、円堂と違って

私は何も答えられるものも、掛けられる言葉なんてないから。

「…手術が終わったら…会いに来てくれるかな」

頷けば、繋いだ手に力が籠った。

「また、ハイタッチしよう」

「うん！それじゃ、今は」

この瞬間は手術の成功を願い、ハイタッチしよう。