自由な君と。- 豪炎寺修也 - ep8 (ページ13)

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会いたい。ページ13

イナズマジャパンもアメリカ代表も1歩も譲らない、遠く離れた観客席からでも分かる

一哉くんのこの試合にかける熱意。

それに答える円堂の気迫。

突然、選手交代の指示が通る。

選手交代は、一哉くんだった。

一哉くん、それほどの手術が待っているんですか

どうして言ってくれなかったんですか

秋には言えたんですか、

あの日の約束は。

「爆熱スクリュー！」

修也の声だ。

久しぶりに聞いた、修也の声。
会いたい、そばに行きたい、こんなんじゃ遠い。

今すぐ、会いに行きたいのに。

何も、影山さんの企みはわからないまま

試合が終わり、イナズマジャパンの逆転勝利だった。

帰り始めた観客の波に呑まれなながら、なんとか、なんとか
関係者用の通路の方へ壁をつたい進んでいく。

待っていれば、会えるはず。

「ミケ！」

「っ！」

右手を引かれて、人の波から抜け出せば
頬に汗を伝わせた、フィディオが居た。

「こっちはイナズマジャパンだ！ユニコーンは向こうだよ」

「……ぁ、」

ほんの少しでもいいから、

みんなに会いたかった。

「ほら、これ着て」
「んわ」

フィディオが着ていたジャージを脱いで、肩にかけてくれた。

ちゃんと袖通して、行くよ。

と、腕を引かれてユニコーンの控え室へ直へ向かう。

グランドから差し込む光が、オレンジに染る。

「カズヤなら着替えてるから少し待ってて」

キャプテンさんにそう言われ、仕方なく開けた所で待つことに。
椅子へ腰を下ろせば、暑そうに服を扇ぐフィディオ。

「迷惑かけて、ごめん…ジャージまで」

「いいよこれくらい」

一哉くんが戻るまで、
公衆電話を眺めながら、ほうっと白い壁を見つめる。

だめだ、点をふたつ書いたら修也に見えてくる。

末期かな。

最近よく眠れないし、もういっそ壁でもいいから
修也だと思って擦り寄っていいよね。

幻覚でも、夢でもいいから会いたいです。

肩を揺すられ、飛ばしかけた意識を連れ戻す。
夢でもいいから合わせてほしかった。

目を擦り、隣に座っていたフィディオに何、と不機嫌たっぷりに返事をすれば。

頭上から

声が聞こえた。

「こんな所で寝るなよ」

耳元を揺らす、大好きな人の声。

「本物？」

「俺の偽物がいるのか？」

修也の頬へ手を伸ばして、頬を抓ってみた。

「痛い？」

俺でやるな、と手を離された。

壁じゃない？大丈夫？