自由な君と。√24 ep.4 【ｲﾅgo】 (ページ16)

今日:5 hit、昨日:6 hit、合計:2,780 hit

道のむこう。ページ16

ㅤ
建物の中を走り出した豪炎寺。
腕の中では、透也が大人しくしながらも、ぎゅっと服を掴んで居た。

大きな瞳からは今にも雫が溢れ出しそうに。

「くそっ、どっちだ……！」

エレベーターに乗り込み、駆け回ればどちらの道か分からなくて。
焦る豪炎寺に、透也がまるで「あっち」と言うように手を。

「……わかるのか？」

透也を信じ、再び走り出す。

サッカーを守るため。
大切な存在を守るため。

到底、信じられるはずもない未来から来たという少女の話を信じ
距離を離すことで守ろうとした愛おしい人。

「……っ、」

壁に突き当たる。
この道を進めば、行き止まりだ。

「まんま…」

透也が呟いた。

この道の先には、あの日最愛の人の髪留めが落ちていた地点だ。
静まり返った道。どこか鳥肌の立つような寒気と、背中に嫌な汗。

それでも、透也は必死にそちらへ行こうとする。

「ふー……」

深呼吸をした豪炎寺は、透也を抱え直す。

「……透也はママがそこに居るって分かるんだな」
「んひっ」

にぱっと笑う透也に、ふっと気の抜けたような豪炎寺。

「その笑い方、あいつそっくりだな」

透也のこめかみに、唇を寄せて。透也はきゃはっと楽しそうに声を上げた。

「行こうか、透也」
「あいっ！」

蛍光灯の消えかかった薄暗い道を2人で進み出した。

聖帝の時に愛用ている革靴の底が、タイルに当たる度にこつりと音が響いていく。

「…ｯ」

人影を見つけた。

「まぁまー！」

透也が大きな声を上げれば、ゆっくりとこちらを振り返る。

「……透也？」
「…A」
「！…〜修也！」

ぱっ、と走り出した。
蛍光灯がバチバチと音を立て、チカチカとする。

暗転する中、はっきりとその姿が見えた。

少しだけ近くなった目線と、ふくよかな体。
揺れた髪の毛は長くて。その瞳は輝くような宝石で。

「修也！透也！」
「まぁま！」

豪炎寺の腕の中へと飛び込み、愛おしい人達を包み込む。

─────必ずまた、皆でサッカーしようね。

頬に涙が伝う。

ㅤ