自由な君と。√24 ep.4 【ｲﾅgo】 (ページ15)

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瞳。ページ15

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一隻の船が警笛を鳴らし、船着場へと。
空気に轟く低い音と共に急いできたのだろう、メッシュの取れていない髪が海風に荒々しく靡く。

上着がばたばたと音を立てる。
風に煽られながら待っていたAと、小さな透也がその人の姿を見つけた瞬間。

不安そうな瞳から、安堵と喜びが溢れ出した。

「ぱあぱっ！」

小さな手をぶんぶんと振り、Aの腕から落ちそうな透也。
バランスを崩しかけ、前へと倒れ込みそうになるAを、慌てて抱き締めるように逞しい腕が伸びる。

「……A、透也っ……！」

確かめるように、力一杯抱き締める。
無事であることはわかる。けれど、24歳であるAの姿でないことに不確かなまま。

風がAの背中を押すように、3人を包み込む。
答えるようにAはゆっくりと瞼を閉じ、深呼吸をした。

鼻を通るのは、潮の香りに混ざった汗の香りと、あの家でよく触れた柔軟剤の香り。肺に満たして。
頬に触れるくすぐったい髪。

胸板を押せば、不安そうな豪炎寺の瞳が真っ直ぐにこちらを見ている。

「……豪炎寺さん」
「ん？」

目を細める仕草。
見詰めると分かる、漆黒の瞳に彩られた優しいチョコレートブラウン。

その瞳がずっと物語ってくれていた。
包み込むような優しさと、焦がれるように、息が詰まるほどの愛情。

「必ず豪炎寺さんのこと見付けるから、待っててね」

ふわりと笑うAに、豪炎寺は小さく頷いてその頬へと手を伸ばした。

「必ず受け止める。だから、全力で飛び込んでこい」
「うん」

───── きっと、豪炎寺さんに想って貰えるように頑張るから。

Aの瞳に涙が滲む。

海から勢いよく駆け上がる風が3人を襲うように。
耳を打つ風の音に、思わず目を瞑り。

守るように透也とAを抱き締めた豪炎寺。

風が止み、ゆっくりと目を開けばそこにAの姿はなくて。
腕の中には透也だけ。

「A！！」

咄嗟に声を上げた豪炎寺に、透也がびくりと肩を震わせる。
周囲を確認しても、人影は見当たらない。

焦り始めた豪炎寺に、ふっと顔を上げた透也が必死に腕をばたばたと。

「透也？」
「まーう！まんまぁ！」

腕の中で暴れる透也をあやしながら、透也の見詰める先を追いかければ。

「まさか……」

孤島に聳え立つそこに。

「聖帝、子供達は全てグランドへ待機して……聖帝？」
「すまない、少し待って貰ってくれ」

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