自由な君と。√24 ep.3 【ｲﾅgo】 (ページ48)

今日:5 hit、昨日:6 hit、合計:6,835 hit

切り拓く運命。ページ48

ㅤ
しばらく夕香と話し込んでいると、豪炎寺が戻ってくる。

「お兄ちゃんと天馬くんに接点があったなんて…。憧れの人が敵、彼…これから戦っていけるのかな」
「戦って行けるよ夕香。彼は…」

いや、彼だからこそ。表情を変えない豪炎寺へ夕香も真剣な顔付きのまま。

「随分高くかってるのね」
「松風天馬のサッカーへの思いを信じているだけだ」

変わんないね、そういうとこ。安心した様に笑みを僅かに浮かべた夕香の腕の中で一身に豪炎寺の視線を受けていたAは気まずそうに視線を逸らす。

「でもそっちは大丈夫？革命派に回った学校潰したの、お兄ちゃんの指示じゃないでしょう？“あの人”何でしょ？」
「誰がやったとしても関係ない。今のサッカーは多くの人を飲み込んで膨れ上がりすぎている…」

夕香と豪炎寺の会話をただ、黙って聞いていたAはゆっくりと口を開いた。

「大丈夫です」

真っ直ぐに豪炎寺を見詰めるAは、まだ硬い表情で笑いかける。
安心させようと魅せる笑顔に豪炎寺も眉を下げたその瞬間、砂利の擦れる音が聞こえ3人は振り向いた。

「剣城…」
「つるぎ…さん？」

「お時間いいですか…」

話の一部始終を聞いていたのだろう、剣城が豪炎寺から視線を逸らさない。
その視線に豪炎寺は小さく頷き、Aへと手を伸ばした。

「夕香と家で待っていてくれ、その後送ろう」
「いえ、電車で向かいます」
「一緒に行こうか」

遅くなっては申し訳ないと1歩引いたAに間髪入れずに豪炎寺は言葉を返した。楽しそうに笑う夕香に肩を落としながら、夕香の腕の中から豪炎寺の元へと踏み出す。

「場所を移そう」

豪炎寺に提案され、河川敷を後にした。
向かった先は鉄塔広場。Aは目前に広がった景色に瞳を輝かせ、するりと豪炎寺の手を離して駆け出した。

鉄塔広場から見下ろす街に夢中になるAを視界に映しながら、豪炎寺と剣城は話を進める。

それは、河川敷で豪炎寺がサッカーボールを蹴った瞬間を目撃した衝撃と確信。

憧れ何度も目に焼き付けるように見た炎のストライカー「豪炎寺修也」のフォーム。
愛おしそうにAの名前を呼ぶ仕草と、そのAの旦那が“豪炎寺”である事を知っていたから。

聖帝の正体に気付いた剣城はその先の目的まで踏み込んでいく。

風が優しく吹いていた。

Aのミルクティ色の髪が揺れ、宝石の様な瞳は夕焼けを写し揺れる。

管理サッカー、その先にある未来は何色だろうか。
ㅤ