自由な君と。√24 ep.3 【ｲﾅgo】 (ページ4)

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歪。ページ4

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「案内は林野教官が来ます」

そう言われ、荷物を持ったままのAは待機させられていた。
しばらくしてやってきたスタイルのいいショートヘアの女性が、Aへと声をかける。

「貴方が新しい教官の方？」
「はい、Aです」

軽く頭を下げた女性は、「林野です」と挨拶を早々に終わらせて着いてくるように指示を出していく。

歩きながらに淡々と建物の構造、配置。育成されているシード達の寮やルールを説明していく怒涛の勢いにAは目を回す。

「ここが教官の利用スペースです」
「は、はひ…」
「暗証番号は任意なので後で登録するように。隣の部屋は私です」

扉を開き、用意されていた部屋へと一先ず荷物を置いたAへ一息つく間もなく林野は「次」と声をかけては、走早々と去ろうとする。

慌てて荷物を放り、Aは林野の後を追いかけていく。

「……これは」

通路を歩いていれば、ガラス張りの窓の向こうに広がる異様な光景にAは言葉を失った。

「訓練場ですが……何か？」

それは“訓練”と言うにはあまりにも異質で。
むしろ“実験”と捉えるのが適切ではないか、そう思える様な…否、正しくは“監獄”だうろか。

そしてその眼前の事実を、目の前に居る林野という教官は取るに足らない事のように疑問にも思わない。

「……いえ」

歪だ。

吐き気を覚える程の訓練施設。

剣城があまり語りたがらなかったゴッドエデンのこと。
剣城京介という少年が13歳にして、1人で雷門イレブンを制した実力の土台。

まるで、写真が1枚ずつ変わっていくように。
ガラス張りの向こうの景色が姿を変えていく。

どの部屋も訓練所とは思いたくもない様子に、Aは握りしめた掌に爪を立てる。

「重要な場所は以上。他は館内マップを見て覚えてください。立ち入り禁止の区間は───── 」

気が付いた頃には、部屋に備え付けされていたシャワー室にいた。

「うっ……ｯ」

目を閉じても瞼の裏に焼き付いてしまったあの光景。
古い記憶を揺さぶり起こされたように、淡い紫色の光がちらつく。

襲い来る無数のサッカーボールの雨。

使えないと罵る、兄と慕った南雲の声。
啜り泣く声に壁にめり込む黒いサッカーボール。

「〜ｯ…」

まだ、自分の身に起きた事実の方が優しいとさえ感じる程、恐怖を覚えたあの訓練施設。

「落ち着け…っ……私は、私のすべき事を…」

ゴッドエデンの情報を外部へ伝える為に。

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