自由な君と。√24 ep.3 【ｲﾅgo】 (ページ17)

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居場所。ページ17

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「聖帝、試合の準備が整いました」

突然声をかけてきた女性に、Aはびくりと肩を揺らした。
黒いスカートから覗く白い脚がパンプスを鳴らす。

「……ああ」

溜息にも取れる返事をした聖帝と呼ばれた豪炎寺は、目の前に座り込むAをちらりと見た。

「……私と一緒に来るか？」

風の通らない通路に風が舞い込む。
柔らかなミルクティ色のAの髪を優しく揺らし、メッシュのかかる豪炎寺の白い髪を撫でていく。

シュウが待っている…そう喉に言葉が詰まる。

「お戯れはお止めください、聖帝」

女性に止められても。豪炎寺はAから目を逸らさなかった。
そんな豪炎寺にAは小さな声で問いかけた。

「……サッカー出来なくても…いい？弱くても…一緒にいて……いいの？」

その言葉に込められた13歳のAAという1人の女の子が
抱えた不安や恐怖身に浴び続けた全てを断片的に写すようで。

豪炎寺は片足をつき、Aの目の前へと手を伸ばす。

「君の好きなようにすればいい。いつだって自由に」
「……好きなように」

ぽつりと呟き、豪炎寺を真っ直ぐに見詰める。はじめて贈られた言葉。
今まで行動を抑制することしかなく、自由を与えられたことに瞳が揺れる。

「わたし、あなたのそばに居たいです…」

切実なAの言葉に豪炎寺は少しだけ驚いたように目を見開き、水気を帯びた瞳を隠すように伏せ。笑顔を浮かべた。

約束が無いと不安で仕方なく体当たりで甘える事も出来なかったAの面影。
不安そうに眉を下げ、差し伸べられた手に怖々と手を伸ばした。

ゆっくりと指先が触れ合ったその瞬間、豪炎寺はその手を優しく力強く引きAをふわりと立ち上がらせた。

「聖帝！」

女性に声をかけられてもなお、豪炎寺は微笑む。

「今からこの子の全ては私が管理する。君にも口出す権利は与えない」

それは幾度となく危ぶまれたAの身を守る為、今度こそ守り抜くために。
許した人達から受けた侮蔑や罵倒に心を傷つけ、暗く淀んだ瞳をした目の前のたった1人の少女が

笑って過ごせる日々を照らしていけるように。
傍らで絶えず、ぬくもりを伝えられるように。

笑顔が戻るその日まで。
愛したAが帰るその日まで。

躊躇いながら豪炎寺の腕の中に埋まり、泣き出す。
本当は不安で怖くて仕方なかった。

だれもしらない土地にひとり、佇む恐怖。

「…さようなら、A」

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