自由な君と。√24【ｲﾅｲﾚ】 (ページ50)

今日:23 hit、昨日:7 hit、合計:9,105 hit

🐾温もりに飛び込む。ページ50

ㅤ
腕を開き、Aが踏み出すのを待つ豪炎寺。
掌を見詰め思考をめぐらす。豪炎寺は決して、あの呟きを無かったことにはしなかった。
それはAも同じことで。同じ未来を思うからこそ、真剣に考えて、自分でいいのか悩んで。

目の前の豪炎寺は「したいように」と言った。それは。答えなんて、ひとつしかない。

世界に光が弾けた。

躊躇わず、ずっと待っていたその腕の中へと飛び込む。両腕を広げワンピースを風に靡かせて豪炎寺の首元へと顔を埋める。

ぎゅうと、抱き締める腕に力を込めて。

「私も……！修也と結婚したい！ずっと一緒にいたい！」

墓石に手を振り、浜辺へ歩み寄る。
波間に立ち、ワンピースを潮風に遊ばれるAを見詰めた豪炎寺。
視線に気付き振り向いたAは息を飲む。

黒い瞳かまるで優しい焔のように静かに揺れていた。
その眼差しはいつだって真っ直ぐに熱をくれる。

不意にスマホを手にした豪炎寺がAへとカメラを向けた。
カシャリ…と音が。初めて、豪炎寺がAを写真に収めた瞬間。
Aは気が抜けたように笑いだし、照れくさそうに頬を弛め笑う。

スマホをしまい、代わりにポケットから出てきた小さなケース。
砂浜に足を取られながら近付き、豪炎寺はそっとケースを開く。

「…改めて、言わせてくれないか」

何も言わずに頷いたAの目尻には薄らと太陽が反射してきらきらと輝く涙。
開かれたケースから出てきたのは小さな指輪。蕾の様に愛らしいエメラルドがあしらわれたそれを、Aの手を取りそっと、指に触れる。

左手の薬指に感じる指輪。
そっと、左手をあげて空へかざした。降下していけば、掌の向こうに豪炎寺が見えた。

目を細め微笑めば、雫が跳ねる。

「結婚しよう」
「……はいっ」

波の音に、砂浜に重なる2つの影。
微笑む2人の横顔は同じように愛おしそうに。

.

後日、豪炎寺家の墓石の前で手を合わすA。
どうしても直接、伝えたいとAからの強い意志で墓参りへ。

「これからよろしくお願いします……お義母さん」

ふわりとAが微笑めばそよ風が1度だけ。
まるで祝福するようなその風に、Aは瞳を震わせた。

「そろそろ行くか」
「うん！それじゃ、また来ますね」

立ち上がったAは豪炎寺の手のひらへと手を伸ばし。
手を繋いで見上げる。そこにははにかんだ様に微笑む豪炎寺。

シャッターの切る音をこれからも、何度も重ねていく

何度でも。
ㅤ