自由な君と。√24【ｲﾅｲﾚ】 (ページ48)

今日:8 hit、昨日:7 hit、合計:9,090 hit

幸福の香り。ページ48

ㅤ
それは、少し前の話。

久しぶりにオフの日が重なったAは、一人暮らしをする豪炎寺の部屋へと泊まりに来ていた。
日々の疲れからか、中々起きてこない豪炎寺の為に朝ご飯の用意を。

冷蔵庫を開け、ふむ。顎に手を添えメニューを考える。
仕方ない、簡単なもので済まそう。と切り替えていく。

お湯を温め、俎と包丁と。まるで我が家のように戸棚から用意し、調味料も迷いなく戸を開き。

とん、とんと、優しく包丁と俎の音が。
くつくつと煮えるお湯に、冷蔵庫から出しておいた卵をゆっくりと沈め。

「〜〜♪」

鼻歌を上機嫌に。
トマトを切り終え、水でサッと洗ったレタスをちぎっては水切りを。
思い出したように手を吹き、食パンへと手を伸ばした。

.

「…遅いなぁ」

朝食の用意が出来たところで、豪炎寺は起きてこない。
少しだけ頬を膨らませAは寝室へと入り込み、毛布を頭の先までかぶって寝息をたてる豪炎寺を見つめる。

毛布を少しだけ持ち上げれば、自分の身代わりに置いていった大きめの猫のクッションを抱えて眠る豪炎寺。
ふふ、と小さく笑い声が零れてしまいAは豪炎寺の頬へと人差し指を伸ばした。

「んん…」
「おはよー、修也。もう9時なるよ？」
「…ん」

頬をつつかれては、少しだけ開いた瞳。
眠そうにまだ微睡むような柔らかい眼差しに、Aは目を細めた。

数回、瞬きをして。ゆっくりと開けばまだ睡魔が残った瞳のまま、体を起こした豪炎寺。

「ご飯出来てるよ」

ベットへと座り、自由に跳ねた髪を直すように撫でるA。
まだ眠いのだろう、頭を撫でるAを抱えるように腕を伸ばした豪炎寺はAの耳元で眠い…と、かなり小さな声で呟いた。

「私の手作りサンドイッチだぞう。この間秋から聞いた特製ソース何だけど？」
「…たべる」
「起きて〜」

ベットから降り、豪炎寺の両腕を引いて立ち上がるように促す。
重心が傾き、後ろへと倒れ込みそうになるAは慌てふためく。

「わ、わ〜！」
「ふは、」
「もー！起きてるでしょ？！」

凭れかかる豪炎寺を抱き留め、Aは笑う。既に覚醒した豪炎寺もごめんごめん、と優しく背中を撫でていく。

「ほら、ご飯にしよ！」

手を繋ぎリビングへと向かえば、テーブルに広がるサンドイッチ。
たまごサンドに野菜サンド、いつの間に用意ていたのかカツサンド。

鼻をくすぐる幸福の香りに豪炎寺は目を伏せて小さく微笑む。
そして思わず呟いた。

「……結婚したい」
「へ…？」
ㅤ