自由な君と。√24【ｲﾅｲﾚ】 (ページ45)

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背中を押す祈り。ページ45

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蝉と共に走り過ぎた夏の終わり。
木枯らし荘の庭で、子供用のプールを出し犬と戯れる木野の親戚の子供を見詰めながらAは肩を落とした。

「どうしたの？Aさん」

柔らかい綿菓子のような髪を揺らし、松風天馬が首を傾げれば隣に行儀よく座る犬、サスケも首をこてんと傾ける。
Aは両手を伸ばしマシュマロのように柔らかい松風の頬を揉む。

「ふっへへ、くすぐったいよ〜」
「天馬くんは可愛いね〜」

大人しく撫でられる松風を、サスケを撫で回すようにわしゃわしゃと少し強めに撫でくりまわしても嫌がる素振りもなく。

「すっかり仲良くしさんだね。Aはさっきから溜息ばかり……何かあった？」

玄関から氷が浮かぶ冷たいお茶が入ったグラスを手に、木野が2人の元へと歩み寄る。

「やったー！ジュースだ」
「天馬、零さないようにちゃんと座って」

木野から可愛らしいプラスチックのコップを受け取った松風は喉が相当渇いていたのか、喉をごくごくと慣らしながら飲み進める。
そんな松風を見守りながら、Aは受け取ったグラスの縁をなぞり肩を落とす。何度目だろうか。

「実は……修也と大学が離れる事を今日知ったの」
「まだ決まった訳では無いんでしょう？」

隣に腰掛ける木野へ、ふるふると首を横へと振り揺るぎない決定である事を伝えた。

「そっか、寂しくなるね」
「うん…」

きょとりと顔を覗き込む松風の柔らかい髪に触れ、優しく撫でると松風は頬が零れ落ちそうな程に頬を緩めて笑う。

「大学は行きたいけど、皆と離れるなら卒業したくない…」
「そうね、ずっとこのまま時が止まっちゃえばいいのに」
「秋でもそんな風に思うんだ、意外」

グラスへ唇を添え、一口だけ飲み込んだ木野がゆっくりと瞳を伏せる。

「思うよ…」
「大人になったら一哉くんとは今よりも自由に会えるんじゃない？」
「アメリカに来ないかって誘われたの」

投下された爆弾に瞬きを繰り返していれば、木野は睫毛を震わせ静かに空を見上げた。

「私ね、この稲妻町が大好きなの…それにゆくゆくはここの管理人を引き継ぎたいなって考えているんだ」
「そうなんだ…一哉くんは日本に来るって？」

Aの言葉に首を左右に振る木野の表情はどこか晴れていた。

ペガサスが空へ舞う為なら、何度だって乙女は祈るのだろう。
例え離れていたとしても、世界を舞台に力強く羽ばたくその音が聴こえるなら。何度でも、たった一人の為に祈る。

「離れても大丈夫、絶対…大丈夫」
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