自由な君と。√24【ｲﾅｲﾚ】 (ページ29)

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星空に。ページ29

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Aを引き止めていたのは緑川。
不思議そうに見上げたAの瞳には、提灯や出店の明かりが揺れていた。

「…君に話したい事があったんだ」
「話…？」

怖い話なら聞きたくないなぁ…と俯くAに緑川は思わず声を出して笑った。

「違うよ、Aと2人で。ちゃんと話したかったんだ」
「……言われてみれば、2人で話す事ってなかったね」

日本代表として肩を並べた時も、焦る気持ちから前線から離れる形となった緑川。

除夜の鐘を聴きながら、緑川とAは人混みから抜け、近くの石垣へと腰をかけた。
広がる空を見あげた2人は、夜空に瞬く星を見詰めて思い出したように語り出した。

「昔さ、皆で星を見たの覚えてる？」
「勿論。ヒロトが見たいって……皆で夜中に抜け出したんだよぁ……懐かしい」

瞼の裏に、あの日見た。満天の星空が今でも鮮やかに思い出せる。

「Aは将来、どうしたいとか夢とかある？」
「うん…私は、プロで活躍する皆をサポートしたい。だからね、大学行って、色んな分野の事を学びたい。食事とか健康とか、ぜーーんぶ！」

へへ！と楽しそうに笑うAに緑川は目を細める。
大人になったAの目線の先に、ゴールへと真っ直ぐ駆け抜ける炎のストライカーが見えた。

「リュウジくんは？」
「俺は…お日さま園を守りたい」
「守る……？」

首を傾げたAに、緑川は空を仰ぎみたまま目を閉じる。
エイリア学園の事件以降、未だにエイリア学園に関わった者へと風あたりは強く。

お日さま園を管理する吉良財閥も不安定なまま。
今は、一人娘である吉良瞳子が踏ん張って、その両方を抱え込んでいる。

「…ヒロトが吉良財閥を継ぐ話が出てるんだ」
「え？！」

まだ、可能性な話だけどね？と肩を竦める緑川に、ふぅん？とさして興味のない反応を見せたA。

苦しい想いも、辛い想いもした。
けれどその場所は帰るべき場所でもあって、今でも変わらない温もりと愛が満ちている。

「……うん、私もお日さま園守りたいな」
「思いは皆同じだな」

緑川は将来、財閥を継ぐであろう基山の右手となれるように勉強していく予定だと嬉しそうに笑った。

他の面々も、サッカーを将来の夢には出来ないけれど。
必ず、お日さま園の力になれるようにと奮闘しているようだ。

一人一人の持てる力が小さくても、沢山集まれば
宵の空に広がるあの星空のように輝ける。

幼い頃に見上げたあの、涙が出る程の優しい流星の空のように。

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