24時間テレビーNEWSー part3

▽増田side▽ ページ22

増「てごしっ！」


生放送が終わった途端、手越は文字通り床に崩れ落ちた。


からだが傾いているのを見て、慌てて名前を呼んで手を伸ばしたけれど、真っ青になった手越はそのまま床へ。


手越は、床に両手をついて、はぁはぁと荒い息を繰り返していた。


手「…はぁ、げほっ…げほっげほっ、はぁっ、」


苦しそうに前のめりになる。スタッフさんや共演者さんをはじめとするスタジオにいる全ての人に緊張感が走った。


手「……っ…げほっげほっげほっ、……う…」


手越の隣にしゃがんで背中をさすっていると、手越が急に口を押さえた。


…やばい、


増「すみません誰でもいいので袋ください！」


スタジオ中に響くような声で怒鳴るように言う。俺ってこんなに声出るんだ。


増「手越、てごし、ごめんな、ごめん、我慢させてごめんな」


手越の背中を必死にさすりながら囁く。ごめん、ごめんな。それだけを、ただ繰り返す。


手「……っ、うぇっ…」


手越のからだが強張り、お腹に力が入ったのがわかる。


手「…ごめ…っ……う、っ」


増「…大丈夫、気にしないで出せ」


もう一度手越のお腹に力が入った。手越の指の隙間から吐いたものが溢れそうになったその瞬間、スタッフさんの1人が袋を持って走ってきた。


「増田さん袋です…っ」


黒くて大きな袋はもう既に広げられていた。


増「すみませんありがとうございます、手越、もういいよここに吐きな、」


手越の口元に袋を持って行く。手越は口から手を外し、激しく吐いた。


手「……はぁっ、うぇぇっ！…はぁ、はぁ…、っう、はぁ、」


スタジオは、静まりかえっていた。手越の荒い息遣いだけが、聞こえる。


手「……もう…だいじょうぶ…」


手越が弱々しく袋から口を離す。


俺は黙って頷き、袋の口を縛る。


手越が吐いたものは、全て胃液だった。


．


俺が顔をあげると、もう座っていることもままならないはずの手越がよろよろと立ち上がっているところだった。


頭を下げる。


手「すみませんでした、」


深く、もっと深く。掠れた声で、ひどい鼻声で、辛そうなひらがなの言葉で、謝る。


手「おみぐるしいものをおみせしました、」


辛そうに目をつぶって、それでも顔をあげない。


手「ごめいわくを、おかけしました。ほんとうにすみませんでした」


手越の声が溶けていく。時が止まったように静かになる。


暫くの沈黙の後、共演者さんのうちいちばんベテランの方が口を開いた。

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