○加藤side○ ページ15
手越が甘えている。
珍しいな。
…でも、良かった。手越ひとりで我慢することが、これでひとつ減ったはずだから。
まっすーが笑いながら茶化すと手越はほっぺを膨らませて小山の方を向いた。
返事がないだけで「いやならいい」なんて早口で言っていたから、やっぱり恥ずかしかったんだろう。熱のせいで赤くなっていた頰が更に赤く染まっていた。
手「…けぇちゃん、」
物凄い鼻声で小山を呼ぶ。
その鼻声には、寂しさも、辛さも、恥ずかしさも、安心も、不安も、ぜんぶ、詰まっている。
小「てごちゃん、」
お前らはカップルか。そうふざけて突っ込む隙もないほどに、手越は小山を、小山は手越をじっと見ていた。
…手越は、正確にはどこを見ているのかわからないけれど。
手「けぇ、ちゃ…ぎゅう、」
小山が、まっすーが、顔を見合わせる。まっすーが小さく頷いて、小山は手越の前に跪いた。
…と、小さな手越を、大きくてすらりとした小山が包み込んだ。まっすーの膝の上の手越を、上から。覆いかぶさるように。
小「…手越」
愛おしそうに、頭を撫でる。楽屋には、繰り返されるその声だけが響いて。それは、空気を切なく揺らした。
手「…っ、けぇちゃ、けぇちゃん、」
小山が手越を抱きしめてから、結構経った。
手越が片手だけ出してぱふぱふと小山の背中を叩く。切れ切れの息でけぇちゃん、と連呼しながら。
手「けぇちゃん、くるしい、よぉ」
小山がぱっと手越から離れる。小山の背中に乗せていた手越の両手は寂しく空をおよいだ。
小「…ごめん、重かったね」
手越が、いや、重かったっていうか、と口ごもる。
手「おもく、ないけど…。……ありがと」
小「…ふふ、どういたしまして!」
手越が本当に苦しそうにありがとうを言って
…俺の方を見た。
手「…しげ、」
加「…な、なななんだよ」
言葉がすんなり出てこなくてつっかえる。これじゃ小山と一緒だ。しっかり、シゲ。
増「シゲまでなに動揺してるの」
加「してねぇよ!」
俺が笑うと、今度はまっすーが真剣な表情になった。その空気を感じとってか、小山が手越の相手をしてくれる。
増「……手越から何かお願いされたら、できる限り聞いてやって」
小声で言われる。俺も真面目な表情を作って頷くと、まっすーに軽く叩かれた。
増「深刻そうな顔しちゃ駄目だろ」
まっすーがにっこり笑う。
増「楽しそうに笑ってなきゃ、俺らは」
165人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふわり(プロフ) - アスタさん» 完結してしばらくたったのにまだ読んでくださる方がいたなんて嬉しいです( ; ; )こんな長く拙い文を読んでくださったんですね光栄です…!私のお話で泣いてくださったなんてめちゃくちゃ嬉しいです、わざわざコメントありがとうございました……!(^^) (2017年10月6日 22時) (レス) id: 841f60ac53 (このIDを非表示/違反報告)
アスタ - 今更ながら最初から読みました!初めてこういう小説でマジ泣きしました。゚(゚´Д`゚)゚。 (2017年10月5日 2時) (携帯から) (レス) id: c9d4810d09 (このIDを非表示/違反報告)
ふわり(プロフ) - 手越香澄さん» ありがとうございます( ; ; )私もこれを書くのが日課だったし楽しみだったし、なにより寂しいです( ; ; )いつもコメントありがとうございました…!長い間ついてきてくださってありがとうございました(^^)また是非コメント欄でお会いしましょう! (2017年8月24日 19時) (レス) id: c582c8dc51 (このIDを非表示/違反報告)
ふわり(プロフ) - すだちさん» 素敵だなんて…!嬉しいです(>_<)ありがとうございます!確か前もコメントくださいましたよね、?またコメントしていただけるなんて嬉しいです…!これからも頑張ります…!また是非コメント欄に遊びにきてくださいね(^^)いつでもお待ちしています…! (2017年8月24日 19時) (レス) id: c582c8dc51 (このIDを非表示/違反報告)
ふわり(プロフ) - ゆきさん» こんなに長かったのに全部読んでくださってありがとうございます(^^)文章を褒めてもらえる日がくるとは…。嬉しいです!新作出しましたので興味があればのぞいてみてください(>_<)番外編…!考えてなかった!けど書きたいです!そのときはまたお願いします…! (2017年8月24日 19時) (レス) id: c582c8dc51 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ふわり | 作成日時:2017年6月5日 22時