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家に通してもらい、ダイニングでお母様にマニュアル通りに説明し終えると、お母様は

「龍斗！」

と大きな声で2階に向かって呼んだ。

トントントン、と静かに音を立てながら降りてきたのはスラリ、とスタイルが良く、顔がよく整った好青年だった。

「作間龍斗です。よろしくお願いします。」

低音ボイスで落ち着く感じの声質の彼はぺこり、とお辞儀をして言った。

『あ、た、髙橋Aです。よろしくお願いします。』

しっかりしてよ、私。
焦って挨拶し返す自分に呆れながらも、気を取り直す。

『えぇっと、では、お子さんの龍斗くんとも面談してこれからの方針を決めていきたいと思います。お２階の龍斗くんのお部屋に上がってもよろしいでしょうか？』

お母様は上品に頷いて、

「龍斗、案内してあげなさい。」

と、ピシャリっと言った。

龍斗くんはそれに動じるまでもなく私に、目配せして、

『先生、こっちです。』

と静かに言った。

龍斗くんの部屋は、シンプルな淡いブルーをテイストとした部屋だった。

「先生はここに座ってください。」

龍斗くんは私を誘導するように勉強机に向かっている椅子を引いてくれた。

『どうもありがとう。』

龍斗くんは私が座るのを見ると、こくんと頷いて自分はベットの上に座った。

とりあえず、今の成績とこれからの目標を設定するために、前学期の成績表を見せて欲しいと頼んだ。

「これです。」

指がすぅっと伸びるように長いようでいて、ゴツゴツとした男らしい手がとても印象的だった。

『……すごいじゃない！家庭教師なんて必要ないくらい。龍斗くんならどこの大学にでも行けるよ。』

オール5。こんな成績表、私は見た事がない。

思わず出た私の褒め言葉に、龍斗くんはそんなことないです、と耳を赤くして微笑んだ。