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私がお金に飛びついたのは理由がある。
うちは元々母子家庭で、塾代も払えないようなカツカツの生活だった。

もちろん大学も奨学金で。今はお金を貯めないと、とちょうどバイトを探していた時期だった。

私は咲希の口車に乗せられて、あっという間に家庭教師の派遣会社に登録してしまった。

「いや～ほんと助かった！Aのおかげ。」

してやったりと言った表情の咲希。
なんとも言えない気持ちで咲希を睨みつけていると、

"ブブブ"

『あれ、メールだ。』

開くと、カテキョの派遣会社から。
さっそく私が家庭教師をするおうちが決まったらしい。

「ふふふ、頑張ってね。」

咲希は景気づけに、とタピオカ1杯奢ってくれた。

日曜日の昼下がり。指定された時間に到着できるように家庭教師先の最寄り駅に降り立った。

『高級住宅街だな…。』

きっと受け持つ生徒さんのおうちも豪華なんだろうな。
徒歩で3分ほど歩くとすぐに到着した。

"作間"

と、楷書で書かれた名札のおうちに着き、私は深呼吸をしてインタホーンを押した。

『家庭教師で参りました。髙橋Aと申します。』

「今お伺い致します。」

中から出てきたのは厳格そうなお母様だった。