桜、咲いたよ。[tk×in]

#21 ページ22

side yuya

指定したお店は、以前にも来たことがある場所。

ここの店主兼バーテンダーは伊野尾くんと知り合いらしくて、どことなく伊野尾くんに似てる気がするひと。

LINEしたのは8時すぎ。

夜景に反射する腕時計はもう9時すぎ。

飲んでる場所はそんなに遠くないって言ってた。

嫌な予感が頭の中を巡り出す。

【3日後。】

今日は、あの日からちょうど3日。

｢伊野尾くんになんであのことを言わなかったんだよ…｣

予約しておいた席に俺が来ないことを心配したのか、店の中から店主の彼が出てくる。

黒いベストに真っ白なシミ一つないシャツ。

伊野尾くんみたいなマッシュルームヘア。

ぷっくりした唇に、キラキラした目。

やっぱり伊野尾くんそっくり。

｢高木さん、予約された席、まだ空けてありますけど…｣

｢あ、瑛治くん。うーんと、まだ連れが来てなくて…｣

｢いつもの伊野尾さん？｣

｢そうそう。瑛治くんそっくりのね。｣

｢あはは、アイドルの伊野尾さんには僕なんか、到底かないませんよ。｣

彼が笑った時、

俺は、

伊野尾くんが、

自分のものじゃないことを、思い出した。

｢早く行かなくて、いいんですか？｣

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