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「わぁ……もう夏だね」
北人「暑いよね。でも晴れて良かった」
「私、湘南なんて初めて来た」
北人「俺も。お洒落なお店多いから来てみたかったんだよね」
平日だからだろうか、幸い人が少なかった電車を降りて少し歩くとすぐに青く光る海が見えて、照りつける太陽と、涼しい海風に足を止めた。
海風で帽子が飛ばないように抑えてるAちゃんとの距離を詰めて、空いている手をそっと握ってみると驚いたように俺を見て、視線が絡むと柔らかく微笑んで握り返してくれた。
「海…久しぶりだな」
北人「足だけでも入ってみる?」
「え?笑」
北人「冷たくて絶対気持ちいいって、行こ!」
繋いでいた手を解いて細い手首を掴んで走り出すと、少しだけ戸惑う顔をしながら着いてくる。
その手にはやっぱり指輪がついていて
でもそれを見ないフリをして波打ち際まで来て、脱いだ靴を並べて揃えた。
北人「お、結構冷たい!」
「本当だ…でも気持ちいい」
北人「でしょ?」
浅瀬に足が浸かると、Aちゃんも楽しそうに笑って、変わらず帽子を抑えながら足をぴしゃぴしゃと動かして飛沫を飛ばす。
北人「ちょ、服濡れるって笑」
「こんな天気だからきっとすぐ乾くよ笑」
北人「…じゃあ仕返し!」
「待って、量が…!」
…こんなの、ベタかもしれないけど、楽しそうに笑うAちゃんの笑顔がじわじわと心に染み込んでいって、汚い所を忘れてしまいそうになる。
「はぁ、楽しい」
地平線の遥か向こうを見詰めながらそんなことを呟くAちゃんより少し後ろから、その姿を見詰めて
海風でふんわり靡く膝丈の白いスカートが、この瞬間をより濃い時間に変えていく。
……好きだよ、
遅かったね、でも大好きだよ。
こんな出逢い方しか出来なくてごめんね
こんな守り方しか出来なくてごめんね
北人「…Aちゃん」
「わっ、」
手を掴んで引き寄せると、倒れ込んでくるAちゃんを抱き留めて、華奢な体に手を回す。
背の高い俺の事を目を細めて見上げて、一言も話さずに俺の服をきゅっと握った。
「…もう若くないのにはしゃいじゃった」
困った様に笑って言うその薄い唇はピンク色に染まってて、ドキドキさせてくる。
北人「はしゃいでいいよ。Aちゃんの笑顔、俺大好き」
ガキでごめんね
Aちゃんの見ている景色が俺にはまだ分かんないんだ。
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# 岩萌(プロフ) - 茂結田さん» 更新通知来た瞬間読みます笑
たまたまそれが流れたんですけどね。切なかった…笑 (2017年10月10日 20時) (携帯から) (レス) id: 32fbb0b927 (このIDを非表示/違反報告)
茂結田(プロフ) - # 岩萌さん» ありがとうございます(T ^ T)ついに、です笑 これからの展開にも是非注目していただきたいです!言われてみれば、人魚姫の物語と似てますね…笑 (2017年10月10日 20時) (レス) id: 9d38b03f33 (このIDを非表示/違反報告)
茂結田(プロフ) - びすさん» ありがとうございます!!これからも切なさを追求していくつもりです笑 北人の性格と雰囲気をしっかり届けられるようにこれからも更新頑張ります!本当にありがとうございます(^^) (2017年10月10日 20時) (レス) id: 9d38b03f33 (このIDを非表示/違反報告)
茂結田(プロフ) - 青葉さん» ありがとうございます!北人の健気さと、この話の切なさを伝えられるようにこれからも更新頑張ります!(^^) (2017年10月10日 20時) (レス) id: 9d38b03f33 (このIDを非表示/違反報告)
# 岩萌(プロフ) - 茂結田さん» いやいや全然待ちますよ!今回もやばかったです、ついにって感じですね!ニヤけが止まらない(//∇//)
人魚姫聴きながら読むと涙出そうになる…笑 (2017年10月9日 10時) (携帯から) (レス) id: 32fbb0b927 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茂結田 | 作成日時:2017年8月30日 20時