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北人「すいません、ありがとうございました」
運転手「いえいえ……お幸せに」
タクシーを降りると、運転手さんが俺の背中で眠っているAちゃんをチラッと見ながら微笑んでドアを閉めた。
北人「……だから違うって、」
時間も時間なため、誰も乗っていなかったエレベーターに安心して自分の部屋の扉の前まで来て、今更ながらに緊張する。
片付いてるっけ?
見られちゃいけないもの、ない?
彼女を初めて家に上げる学生みたいな気持ちで。
さほど広くない玄関で何とかAちゃんの靴を脱がせてから、とりあえず寝室のベッドに降ろした。
そのまま倒れたAちゃんの顔の横に腰を下ろしてそっと髪を梳かす
北人「……Aちゃん、ここ俺ん家」
「…ん、」
薄らと目を開けて俺を見ると
「北人くんだぁ」
って両手を伸ばしてくる。
北人「うん、北人だよ」
……あぁ本当に、こんな酔い方タチ悪い
Aちゃんが酔って住所を言えなかったから
Aちゃんの家知らなかったから
仕方なく
伸びた手をぎゅっと握って必死に葛藤した
既婚者の
しかも自分の好きな人を
自分の家に上げてしまったこと
いつか罰が当たるかな
北人「あ、タケルさん…」
そういえば、と思ってAちゃんの鞄から携帯を出すと、光る画面には"タケルさん"と書かれた人からのLINEや電話の通知がたくさん入っていた。
……本当に、ちょっとした出来心で画面をタップするとロックはかかっていなくて
その代わりに画面には、この前Aちゃんが撮影したって言ってた
北人「俺の画像…」
"この北人くん私のお気に入り"
って、前嬉しそうに見せてくれた俺の画像がホーム画面になっていた。
北人「…本当に、一体どいうつもり、」
携帯を床に置いて、眠っているAちゃんに跨ると、ギシッとベッドが軋む音がして
北人「ずるい」
自分のベッドでAちゃんが寝てるだけで既に理性保つのだって大変なのに
……家に連れてきたのは仕方ないって理由だけじゃなくて、きっと心のどこかしらには疚しい気持ちもあったよね俺。
でもね、最近は
指輪をしていてもしていなくても
Aちゃんの左手の薬指を見るたびに苦しくなる
もしも今このままキスしたら……
バレない?
北人「Aちゃん…」
薄暗いのに分かる彼女の唇にゆっくり自分の唇を近付けた
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# 岩萌(プロフ) - 茂結田さん» 更新通知来た瞬間読みます笑
たまたまそれが流れたんですけどね。切なかった…笑 (2017年10月10日 20時) (携帯から) (レス) id: 32fbb0b927 (このIDを非表示/違反報告)
茂結田(プロフ) - # 岩萌さん» ありがとうございます(T ^ T)ついに、です笑 これからの展開にも是非注目していただきたいです!言われてみれば、人魚姫の物語と似てますね…笑 (2017年10月10日 20時) (レス) id: 9d38b03f33 (このIDを非表示/違反報告)
茂結田(プロフ) - びすさん» ありがとうございます!!これからも切なさを追求していくつもりです笑 北人の性格と雰囲気をしっかり届けられるようにこれからも更新頑張ります!本当にありがとうございます(^^) (2017年10月10日 20時) (レス) id: 9d38b03f33 (このIDを非表示/違反報告)
茂結田(プロフ) - 青葉さん» ありがとうございます!北人の健気さと、この話の切なさを伝えられるようにこれからも更新頑張ります!(^^) (2017年10月10日 20時) (レス) id: 9d38b03f33 (このIDを非表示/違反報告)
# 岩萌(プロフ) - 茂結田さん» いやいや全然待ちますよ!今回もやばかったです、ついにって感じですね!ニヤけが止まらない(//∇//)
人魚姫聴きながら読むと涙出そうになる…笑 (2017年10月9日 10時) (携帯から) (レス) id: 32fbb0b927 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茂結田 | 作成日時:2017年8月30日 20時