俺が好きになった人【吉野北人】

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「ほ、北人くん…？」


北人「……ごめん」



Aちゃんが今 どんな顔してるのかは見えないけど、肩に顔を埋めると優しく香るシャンプーの匂いに、抱き締める腕に力が入る。



密着している分、Aちゃんの体温を感じて

あー好きだなって思った。




……本当は一目惚れしていたのかもしれない

昨日から胸が締め付けられていた理由は



北人「……好き、」


「へ…？、」


北人「え、」



ポロッと口から零れた言葉に驚くAちゃんと…俺。


「北人、く…」


北人「いやっ、ちが…!!」


咄嗟に離れて距離を置くと、振り向いたAちゃんの顔はほんのり赤かった。


好き、そう認識しただけで
伝えるつもりなんて……。



北人「…その、Aちゃんが泣いてるからっ、俺はちゃんと好きだよって…伝えとこうって思って……メ、メンバーとしてね！」


自分でも意味のわからない言い訳をして、"メンバーとして"を強調させて両手を振った。



北人「ま、まぁ、俺なんかがわざわざ言わなくても、旦那さんが言ってくれてるんだろうけどさ！」


「……そうだね」


北人「…」



あれ？何か言葉間違えた？

"旦那さん"という言葉に少しだけ肩を揺らしたAちゃんの笑顔が寂しそうに見えて首を傾げる。



「……北人くん」


北人「ん？」




今はあまり近付かないで…

心臓がドキドキしてるのバレそう


少しずつ歩み寄る彼女にそんな事を思った。




「ありがとう。…私も、好き」


北人「っ、」



違う、違うんだよ

Aちゃんが言う"好き"は
俺の思う"好き"とは違うんだよ



分かってる、分かってるのに…



北人「……知ってるよ、ほら その顔どうにかして。じゃなきゃ戻れない」


「皆のメイク直しよりもまず、自分のメイク直しだね笑」



好きな人が微笑みながら"好き"なんて言ったらさ、ときめかずにはいられないじゃん



さっきよりも目の赤みが引いたAちゃんの頭を撫でると、気合を入れて頬を叩いた。



……触れられるのは、これまでなんだよな



今は何も付いてない、左手の薬指を見て苦しくなった俺は すぐに手を離した。

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