捌話* 鬼 ページ9
「あ、なたは……
京極屋の…蕨姫、花魁…？」
部屋に立っていた女には、見覚えがあった。
部屋の中からいつも、彼女の花魁道中を見ていたからだ。
この女の名を花街で知らない者など、
ひとりとしているわけがない。
蕨姫は冷たく美しい笑みを浮かべ、
Aのそばに歩み寄りながら続けた。
「
だけど私の本当の名前は堕姫。見ての通り、鬼さ」
「わ、蕨姫が……鬼……！？」
「ああ、鯉夏は食べさせてもらったよ。
あんな上物の人間、喰わない方がおかしいからねぇ」
食べた、と。
今、目の前のこの女……この鬼は、確かにそう言った。
自分にとっての恩人を、
姉のように慕っていた人を殺されたAは、
目じりに涙を浮かべながら、
拳を握りしめて怒りでふるふると震え出した。
「鬼は人間を食べないと生きていけないんだから、
仕方の無いことだしねぇ？
安心しな、お前もすぐに鯉夏の所へ行けるよ」
「っ、私も、食べる気なの」
「当たり前さ。
お前はこの辺りで一番のご馳走だ、
それでこそ、鯉夏よりも遥かに上等な娘だからねぇ」
「っ！！Aさん下がって！！」
蕨姫……堕姫が帯をAに向けて振りかぶった瞬間、
炭治郎がすんでの所でそれを斬った。
しかし全ての斬撃を切り返すことは出来ず、
炭治郎の羽織りが所々切れて、赤黒いシミが浮かんだ。
「だ、だめよ炭ちゃん！！怪我してしまう…！」
「だい、じょうぶですから！逃げてください！！
女将さんたちのところへ！早く！！！」
「……っ、無事に戻って来てね、炭ちゃん…」
炭治郎の背に隠れながらAは部屋から脱出し、
女将の部屋…ではなく、
鯉夏の部屋から一番遠い自分の部屋に戻った。
走って戻ったので、着物の襟の辺りが汗で湿ってる。
「無一郎は…あんな化け物と戦ってるの……？
いつか…いつか、本当に死んじゃうじゃない…っ、！」
化け物相手に歳下の男の子をその場において、
ここへ逃げ帰ることしか出来なかった自分に心底腹が立つ。
炭治郎は無一郎と同じくらいの歳だろうに。
自分が死ぬかもしれないという恐怖もあるだろうに。
年上の自分は守られてばかりで、
なんと情けのない事だろうと己の無力が悔やまれる。
「…………お父さん…」
Aは父に貰った大太刀に触れ、
震えながら静かに泣いていた。
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えご(プロフ) - 身請け話どうなったの？？ (2022年9月16日 1時) (
レス) @page16 id: d39d0d8832 (このIDを非表示/違反報告)
いちごミルク - 見受け先のボンボンは？ (2021年9月20日 19時) (レス) id: 2a355457dd (このIDを非表示/違反報告)
るはこ - 私、柱での推しはむい君なんです！なので、最高でした！ (2020年12月7日 22時) (レス) id: c60a472fe3 (このIDを非表示/違反報告)
れーんーりー - 待って！身請け相手は！どうなったの!?好きです。頑張ってください！ (2020年12月2日 18時) (レス) id: cff600fdbd (このIDを非表示/違反報告)
しろここあ(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます！すいませんほんと単純な疑問だったんですけど、身請け相手はどうなったんですかね((((( (2020年11月15日 3時) (レス) id: 24437a8857 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春蘭 | 作成日時：2020年11月3日 21時
