漆話* 消えた鯉夏 ページ8
「……寝る前に、
鯉夏姐さんに挨拶しに行こう」
一度布団に入って横になったAだが、
明日出て行く鯉夏のことが気になって仕方がなかった。
何せ、四年間世話をしてくれた恩人だ。
Aが花魁になれたのも、
鯉夏のおかげと言っても過言では無いほどだから。
「おいらん！どこ行くの？」
襖を開けると、厠から帰ってきたと思われる禿がふたり、
こちらをきょとんと見つめていた。
「あ……鯉夏姐さんに挨拶しにね。
姐さんは明日、ここを出て行ってしまうだろう？」
「私たちも行く！」
「いいでしょおいらん！」
「駄目よ？ふたりはまだ子供なんだから。
部屋に戻って休みなさいね。ほら、早くお戻り」
「やだ〜！私も鯉夏おいらんに挨拶しに行く〜！」
着物の裾を掴んで地団駄を踏む子どもたちに、
Aは半ば呆れながら「少しだけね」と手を引いた。
連れて行ってもらえるとわかると、
ふたりの小さな女の子はその顔に満面の笑みをうかべる。
「姐さんも明日のために休まなきゃいけないんだから、
本当に少しだけよ？わかったね？」
「「はぁい、おいらん！」」
「ん、いい子だね」
そして鯉夏の部屋の前についた。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿その時だった。
ﾄﾞｫﾝ!!!!!
「っ！！？」
「わっ！何の音、何の音？」
「おいらん、覗いてみる？」
突然、鯉夏の部屋の中で凄まじい轟音が響いた。
まるで何かが壁を突き破ったような、そんな音だ。
「いいかい？お前たちは女将さんの所においき。
そして絶対に部屋から出てはいけないよ、
わかったかい？」
「で、でも、おいらんは？」
「なに、私なら心配無いさ。
鯉夏姐さんの安全を確認したらすぐ戻るから、ね？」
「……わかった！早く来てね！」
「はやくね〜！」
禿ふたりが階段を下りていくのを確認し、
Aは息を潜めて、静かに襖を少し開けた。
そこで見たのは、とんでもない光景だった。
「……っ、なん、なの……あれは」
鯉夏の代わりに部屋の中心に立つ女。
彼女の周囲を、
帯の形をした気味が悪いものが漂っている。
そして壁は見事に突き破られ、
向こうの建物まで吹き飛ばされた人物の顔が見えた。
「っ、！炭ちゃん！！」
「！だめだAさん！出て来たら、」
「……アンタもいたねぇ、A」
女に睨めつけられた瞬間、
しまった、と思った。
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レス) @page16 id: d39d0d8832 (このIDを非表示/違反報告)
いちごミルク - 見受け先のボンボンは？ (2021年9月20日 19時) (レス) id: 2a355457dd (このIDを非表示/違反報告)
るはこ - 私、柱での推しはむい君なんです！なので、最高でした！ (2020年12月7日 22時) (レス) id: c60a472fe3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春蘭 | 作成日時：2020年11月3日 21時
