拾陸話* 記憶 ページ17
無一郎の屋敷は想像以上に大きかった。
しかしその割には、人の気配がしない。
「ねぇ、無一郎？」
「なに、姉さん」
「大きな御屋敷だけど、人がいないわね？」
「いた所で邪魔になるだけだし」
無一郎は淡々と呟いた。
素っ気ないというか、覇気がないというか……
「……それに、」
「ん？なぁに？」
「姉さんと僕だけで十分だと思うけど」
Aはすっかり驚いてしまい、
暫くの間、無一郎の顔を見つめたまま動かなかった。
そんな姉を不審に思ったのだろうか。
無一郎が「姉さん？」と顔を覗き込んでくる。
「……ふふ。そういう所よ、無一郎っ！」
「わ、ちょっと急に撫でないでよ、髪が乱れる……」
わしわしと嬉しそうに無一郎の頭を撫でるA。
やっと再会出来た弟と、
こうして何でもないことで、じゃれ合える事が嬉しいのだ。
「ご飯は食べてないもんね？」
「うん」
「じゃあ、無一郎の好きなふろふき大根にしようね。
私も久し振りの料理だから気合い入れなくちゃ」
「本当？」
「沢山作ってあげるわね。
無一郎が食べきれないくらいにっ！」
「……ありがと」
表情こそ変わってはいないが、
無一郎が纏う空気が柔らかいものに変わった。
「無一郎、お台所どこかしら？」
「えっと……確か、あっち」
「あっちね。わかったわ」
台所のそばに使われていない割烹着が置いてあったので、
それを使わせてもらうことにした。
ふろふき大根を作るために必要な食材も揃っていたので、
Aは気兼ねなく料理を始めた。
「そういえば無一郎、ひとりの間はご飯どうしてたの？」
「どうしたんだっけ……えっと……」
う〜んう〜んと頭を傾げて、
無一郎は何かを思い出そうと頑張っている。
「そんなに無理に思い出さなくても大丈夫よ。
きっと誰かにお世話になっていたのでしょう、
思い出したら教えてね、お礼を言いに行きたいから」
「……うん、わかった」
御館様の仰っていた通り、
やはり無一郎は記憶障害のような何かにかかっている。
頭の中に、霞のような靄がかかっているんだろう。
「ゆっくり、沢山思い出そうね、無一郎」
「うん……ねぇ姉さん、鍋がグツグツいってるよ」
「あっ、いけない！」
鍋の中身がもう随分と煮立っていたので、
Aは急いで火を止めた。
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えご(プロフ) - 身請け話どうなったの？？ (2022年9月16日 1時) (
レス) @page16 id: d39d0d8832 (このIDを非表示/違反報告)
いちごミルク - 見受け先のボンボンは？ (2021年9月20日 19時) (レス) id: 2a355457dd (このIDを非表示/違反報告)
るはこ - 私、柱での推しはむい君なんです！なので、最高でした！ (2020年12月7日 22時) (レス) id: c60a472fe3 (このIDを非表示/違反報告)
れーんーりー - 待って！身請け相手は！どうなったの!?好きです。頑張ってください！ (2020年12月2日 18時) (レス) id: cff600fdbd (このIDを非表示/違反報告)
しろここあ(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます！すいませんほんと単純な疑問だったんですけど、身請け相手はどうなったんですかね((((( (2020年11月15日 3時) (レス) id: 24437a8857 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春蘭 | 作成日時：2020年11月3日 21時
