愛する人よ、幸せであれ【煉獄杏寿郎】

幸せが十滴 ページ10

「痛いよぅ、助けて……！」



「大丈夫よ、今助けてあげるからね」





小さい少年少女から高齢なお年寄りまで、

1人たりとも死者は出ていない。



これが、柱の力。



二百人近くを鬼に人質に取られていたようなものなのに、

全員救ってしまうとは。





「……やっぱり、師範は素晴らしい方だ…」





幼い少女を列車の中から救い出し、

両親と思わしき人物に預けた、その時だった。





＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ﾄﾞｺﾞｫﾝ!!!!!＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿





「っ！？今の音は！！？」





大地が揺れ、炭治郎と煉獄が居た辺りに砂埃が立つ。


そしてこの、凄まじい闘気、そして気迫。





「さっきの下弦の壱の比じゃない…！！

　まさか…………師範っ！！！」





最悪の事態だ。



竈門炭治郎は負傷、

黄色い少年と竈門禰豆子は気絶状態、

猪頭の彼だって、相当消耗している。



まともに戦えるのは煉獄と、継子のAのみ。



なのに＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿





「師範！！」



「A来るな！！！！！」



「っ！」





相手は、上弦の参。



勝てるのか、煉獄は、この鬼に。





煉獄は、Aや炭治郎達を庇うようにして

上弦の参と戦い続ける。



Aはその戦いを、目で追うのが精一杯だ。



炭治郎達に至っては、

目視する事もままならない様子でその光景を見つめている。





「っ、ぐ……！！」



「師範！！」





真空を飛ばす上弦の参の攻撃に、

煉獄が押され始めた時、Aの体が咄嗟に動いた。



肆ノ型をひたすら繰り返して出し、

真空の打撃から、身を呈して煉獄を必死に庇う。





「お前、邪魔だなぁ」



「っ、あ！」



「A！！！」





目の前に迫る、上弦の鬼の拳。



これを食らったら即死だ、本能でわかる。

躱さなければ、でも間に合わない、どうする。





「……！なんだ、女か」



「！？かは、っ…！！」





Aの顔を間近で見た上弦の参は、

拳を引っ込めて代わりに鳩尾の部分に拳をめり込ませた。



激痛が走る。胃液が逆流する。

しかし何故か肋骨は折れてない、内臓も無事だ。



この鬼なら、Aを殺すなど造作もなかっただろうに。





「女は戦いの邪魔だ、そこで大人しく倒れていろ」



「貴様……Aによくも…っ！！！！」





煉獄は一撃必殺の構え…奥義 玖ノ型の構えをとる。


彼はこの鬼との勝負を、この一撃に賭けるつもりだった。

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