幸せが六滴 ページ6
「…………おかしい」
少し経って、Aは違和感を覚え始めた。
誰も起きていないのだ。
夜だから当然といえば当然なのかもしれないが、
乗客がひとりとして起きていない。
それに、先程より電球が点滅する回数と、
消灯してしまう時間が長くなっている。
「(……何か、良くないモノが迫ってる…)」
師範に知らせなければと、
Aは静寂に包まれた車両の中を急ぎ足で戻って行った。
しかし戻った先で目にしたのは、
全ての人が眠りにおちた、静かな空間だった。
聞こえるのは、列車が線路の上を走る音のみ。
Aが先程座っていた席とその反対側の席に、
三人の鬼殺隊員がいた。
しかし彼等もまた、眠っている。
市松模様の羽織を着た少年と、
黄色い、まるでタンポポのような髪の少年、
イノシシの被り物を被る少年。
__________そして、
「そんな……師範!起きて下さい師範、師範!!」
深い眠りについている、師匠の姿。
どんなに声をかけても、肩を揺すっても起きない。
「師範っ!……………………この縄は…」
師匠の腕に結ばれた、茶色の太い縄。
その縄のもう片方は、
三つ編みのお下げの少女の腕に繋がっていた。
「この人達、一体……鬼の手先?
いや、普通の人間だ。でも何で縄なんて……」
色々な考えが頭を過ぎるが、
とにかく今は、彼等を起こす事が先決だと判断した。
「師範!君達も起きて!!
鬼が出てきてしまったらどうするの!!」
必死に起こそうとするが、
誰ひとり、ピクリとも反応を示さない。
時間だけが刻々と過ぎ、
次第にAは焦りを募らせていく。
その時だった。
急に立ち上がった煉獄が、
自分の腕と縄で繋がっていた少女の首を締め上げたのだ。
「っ!何やってるんですか師範!
その子が死んでしまいます、下ろしてください!!」
煉獄の腕の力を緩めようと、彼の手に触れた時だった。
背後に置いてあった木箱の蓋がそっと開き、
中から小さな少女が出て来たのだ。
「(な、何で木箱から女の子が……
__________いや、この子は鬼だ!)」
咄嗟に刀の柄に手を掛けるが、
その小さな鬼の少女は不思議そうに首を傾げるだけで、
Aを攻撃しようとはしてこない。
もう何が何だか、
状況把握に精一杯だったAは更に混乱した。
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きのこ - 映画見た後で目かパンパンになった時に読ませて頂いたのですが.....何この神作品。涙腺崩壊しました((( (2020年11月22日 21時) (レス) id: 2a559184c7 (このIDを非表示/違反報告)
すぱ - 煉獄さんロスで徐に検索してこの作品を見つけたのですが、この作品を一番初めに読めて良かったです。ありがとうございました。 (2020年10月26日 3時) (レス) id: 3be3f0c040 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)太中大好き人間(プロフ) - 今日見始めたのですが、夢中ですぐに全て読んでしまいました!煉獄さんは何処までも愛する人の幸せを祈っているという事に涙しました。ifストーリーの方も、また会えて、幸せになれて、本当に良かったです。貴方の作品にとても胸を打たれ、また見たいと思いました。 (2020年10月25日 4時) (レス) id: 5bc9e3e078 (このIDを非表示/違反報告)
らんたん(プロフ) - とっても素敵な作品を有難うございます…。煉獄さんのifストーリーは胸にくるものがあります。語彙力がなくてまとめられないんですが、改めて素敵な作品を有難うございました。ほっこり幸せな気持ちになれました。 (2020年10月25日 0時) (レス) id: 1e7e266fc1 (このIDを非表示/違反報告)
美紅(プロフ) - 杏寿郎さんとの幸せです!本当良かったょょょょょょおおおお(泣く) (2020年10月24日 15時) (レス) id: 5e245d9090 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春蘭 | 作成日時:2020年10月23日 17時