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幸せが、溢れる ページ14

「……こんにちは、杏寿郎さん」



「兄上、おはようございます」



「今日は杏寿郎さんの大好物の、

 さつまいもご飯を作って来たんですよ」



「ここに置いておきますが、

 一度に沢山食べては駄目ですからね!」





ある晴れた日のこと。



そこではふたりの話し声と、

風が木々の間を通り抜けていく音だけが響いていた。





「……もう、10年も経ってしまったのですね」



「姉上ってば、兄上の年齢越してしまいましたよ?

 もう二十七になってしまわれましたし」



「こら、千寿郎。

 そういう余計な事は言わなくていいんです!」



「あはは、ごめんなさい姉上」





煉獄杏寿郎の墓所に訪れていたのは、

弟の煉獄千寿郎と、煉獄Aのふたりだ。



あの戦いの後Aは煉獄家と養子縁組をして、

煉獄の苗字を賜ったのである。





「……でも、本当なら兄上と姉上が結ばれた上で、
 煉獄の名を差し上げるつもりだったのですがねぇ…」



「はは。そんな勝手な事して、許してもらえるかな」





冗談だと思ったのだろう。


Aは千寿郎のその言葉を笑い飛ばした。





「父上もお許し下さったでしょう。

 貴女の才能を、
 だいぶ昔から認めていらっしゃいましたから」



「そうだったの?いつもあの態度だからてっきり…」



「それに兄上もきっと、
 どんな名家から縁談が来たって、姉上を選んだでしょう」





そういう方でしたから。



そう言って笑う千寿郎の目尻には、

どんな感情が込められているか分からない涙が浮かんでいた。





そうね、とだけ呟いて、

Aはどこまでも遠く晴れ渡った空を眺める。





そして懐から取り出した紙飛行機を、

風に乗せて飛ばした。





.





.





.





.





拝啓 煉獄杏寿郎様



お元気ですか?しっかりご飯を食べていますか?


空はどのような所ですか?

空を飛ぶというのは、心地好いのでしょうね。


少し羨ましいです。



あの日、貴方は私の幸せを願ってくれましたね。


ええ。おかげで今とても幸せです。


貴方と出逢えた思い出があるから。

貴方に焦がれていた、あの想いがあるから。

私は貴方の戦いを、勇姿を。

煉獄家の末代まで伝えてゆきましょう。


そしていつか、鬼が居なくなった世界で。

ひとつの御伽噺として、語られますように。

あとがき→←幸せが十三滴



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きのこ - 映画見た後で目かパンパンになった時に読ませて頂いたのですが.....何この神作品。涙腺崩壊しました((( (2020年11月22日 21時) (レス) id: 2a559184c7 (このIDを非表示/違反報告)
すぱ - 煉獄さんロスで徐に検索してこの作品を見つけたのですが、この作品を一番初めに読めて良かったです。ありがとうございました。 (2020年10月26日 3時) (レス) id: 3be3f0c040 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)太中大好き人間(プロフ) - 今日見始めたのですが、夢中ですぐに全て読んでしまいました!煉獄さんは何処までも愛する人の幸せを祈っているという事に涙しました。ifストーリーの方も、また会えて、幸せになれて、本当に良かったです。貴方の作品にとても胸を打たれ、また見たいと思いました。 (2020年10月25日 4時) (レス) id: 5bc9e3e078 (このIDを非表示/違反報告)
らんたん(プロフ) - とっても素敵な作品を有難うございます…。煉獄さんのifストーリーは胸にくるものがあります。語彙力がなくてまとめられないんですが、改めて素敵な作品を有難うございました。ほっこり幸せな気持ちになれました。 (2020年10月25日 0時) (レス) id: 1e7e266fc1 (このIDを非表示/違反報告)
美紅(プロフ) - 杏寿郎さんとの幸せです!本当良かったょょょょょょおおおお(泣く) (2020年10月24日 15時) (レス) id: 5e245d9090 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:春蘭 | 作成日時:2020年10月23日 17時

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