『桃花色』 (ページ6)

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「ごめんなさい、そのお誘いは受けられない」

私には決められた人生がある。
それに逆らうことは絶対にできない。

ちぇーと、残念そうにするルフィにナミさんが当たり前でしょと返す。

「仲間にはなれないけど、明日の公演にはぜひみんなに来てほしいな」

特等席を用意しておくから。そうつづけると皆は嬉しそうに笑ってくれた。
特に、ブルックさんは音楽家として私の歌には興味があったらしくとても喜んでくれている。

色々話しこんでいたらすっかり時間が経ってしまっていた、午後の公演には帰るとレオンさんにもいってしまったし早く戻らなければ。

「すっかり引き止めちゃってごめんなさいね、時間は大丈夫？」

「んー…少し急がないといけないかも」

「じゃあ、俺が送ってやるよ！」

名乗りを上げたのはもちろんルフィで、皆に大丈夫なのかと聞かれると「任せろ」と胸を張って私の手をつかむ。

少し不安はあるがルフィの速さなら間に合うかもしれない。

「じゃあ、お願いできるかな？」

「おう！」

＊＊＊

午後の公演には無事に間に合い、ルフィにはお礼を言ってすぐに控室へと駆け込む。
いつものドレスに身を包みステージに上がればうるさいほどの歓声や拍手が私を包み込む。

ふと、観客席のはずれを見るとルフィがいるのが見えた。
ルフィはこちらに気づくとにっと歯を見せて笑う。彼の笑顔は人を元気づける力を持っているらしい。

なんだか無性に、彼のために歌を歌いたくなって気づけば勝手に口が動いていた。

彼から目が離せなくなる理由も、こんなにも彼のために歌いたく理由もわかっている。
さっきであったばかりで、彼のことなんて何も知らないし、彼も私のことなんて何もわからないだろう。

それでも、私は彼を一目見たときに惹かれてしまったのだ。

『これはきっと、一目惚れだったのよ』

本当に伝えることはできなくても、今はただの歌としてあなたに聞いてもらいたい。
そんな思いを込めた歌声が会場中に響き渡っていた。