『桃花色』 (ページ2)

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私の着るドレスと絶妙な加減で色合いがマッチするように作られたステージに立った私へ、人々の視線が集まる。

最初はざわついていた会場も、私が歌いだすとたちまちこの歌声に息をのむ。
誰もがこの歌に惹かれてしまう。

…のはずなのだけど。

「すっげー、奇麗な声だな！！」

思わず言ってしまったと、いうにはやけに大きな声が耳に届いて、声の主のほうへと視線を向けるとそこには、こちらをまっすぐと見つめる黄色い麦わら帽子をかぶった青年がいた。

ぱちりと目と目が合って、その青年のまっすぐな瞳に思わず数秒固まっていると、知り合いであるのだろうオレンジ色の髪の少女と金髪の男性がごつんと青年の頭にこぶしを落とし、すみませんと周りに頭を下げていた。

青年はそんなもの全く聞いてはいないという様子でけろっとした顔をしていたけど。

その後は何の問題もなくステージが終わり、バックヤードへと下がっても何処までもまっすぐで、奇麗で、あの瞳がどうしても頭から離れない。

上の空になってしまっていた私をレオンさんが心配してくれたのだが、どうも落ち着かなくて、用意されていた控室に入り持ってきてもらっていた私服に着替る。

パーカーのフードを深くかぶり、伊達メガネを付けると顔はあまり見えなくなる。
外で待っていた彼に「少し散歩してくる」と告げると一緒に行くと言われたが、今は一人でいたかった。

午後のステージまでには必ず戻るからと半ば言い逃げのような形で会場を飛び出す。

彼からも歌姫として今まで自由に外を歩くことができなかった分、この３日間はのびのびと過ごせばいいと言われている。

中央広場を抜けると、いろいろな出店の並ぶ道に出る。
食べ物やアクセサリーなど売っているものはいろいろあるが、もっとも有名なのはこの島の桜の花びらでを使って作る小物などが多い。

自分の住む島なのに、なんだか目に入るものがすべて新鮮に見えてすごく楽くて、きょろきょろとあたりを見回していると突然体に衝撃が走り後ろによろけた。

どうやら、よそ見をしながら歩いていたせいで、目の前の人影に気づかず、思い切り前を歩いていた人の背中にぶつかってしまったらしい。

「わっ…！」

倒れる！！

そう思って咄嗟に目を強く瞑ったが、いつまでも衝撃は来ず代わりに何か暖かい感触が背中に周った。

「大丈夫か？」

何処か聞いたことのある声が聞こえて目を開けると、さっきの麦わら帽子の青年の顔が見えた。