『桃花色』 (ページ1)

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1.海賊なら__Luffy ページ1

『運命はわっちの自由を奪いそいで歯車を回していくのでありんす』

ふと、口ずさんだ歌にまるで今の自分のようだと、あきらめたように笑って見せた。

開放感のある大きな窓の先には、この島で一番活気にあふれている中心街が一望でき、その奥にはどこまでも続く海の青が見える。

自らを彩る淡い桃色の桜を基調とした華やかなドレスや装飾品は動くたびにしゃらしゃらと静かに音を奏でる。
きっとこれは幸福な暮らしで、誰もが憧れるお姫様として私はここにあり続けるのだ。

「ここにいたのかい？A」

背後から聞こえた声に振り返ると、やさしい笑顔を浮かべながら部屋の入り口に立つ男性の姿が見える。
彼、レオンさんは私の婚約者であり、2日後正式に籍を入れる予定になっている。

といっても、これは俗にいう政略結婚というものであり彼と会うのは今日が2回目だ。

「あ…もしかしてもう時間？」

「あぁ、君の歌声を聞くために今日もたくさんの人が集まってる」

この、『チェリーブロッサム島』は年中桜の咲き乱れる春島で、グランドラインの中でも珍しい平和な島である。
この島には大昔から語り継がれる決まり事がある。

『ひときわ桜の美しい夜、桜のような桃色の髪と瞳を持つ子供が15になったときその子供が20になるまで、人々のために桜の歌姫としてその歌声を咲かせ続ける』

そのため、毎日午前と午後には中心街の広場にて、桜の歌姫と呼ばれる選ばれた少女が歌を披露することになっている。

それが、私の生まれたときから決められた仕事だった。

15になった瞬間から私は毎日人々の前で歌い続け、2日後には20歳の誕生日を迎える。
桜の歌姫をやめるとき、私はこのどんな人なのかも良く知らない男の人と結婚する。

この国でも有数の大貴族の一人息子だ、こんなに光栄な話はない。

でも、私は＿＿＿＿

「…どうしたの？」

私が黙り込んだままだったので、心配してくれたようで彼は私の顔を覗き込むと「大丈夫？」とやさしく声をかけてきた。
そんな彼に大丈夫だと笑って見せると、なら良かったと頭を撫でられた。

「早くしないと、遅れてしまうね。急ごうか」

そう言って手を差し出してきた彼に、一つ頷いて自らの手を重ねると。彼は私の手を引いて部屋を出ていく。

『どうか、許されるならば、私は私の知らない世界を見てみたい』
　
これはきっと、叶うことのない夢。