偶然には愛を (ページ23)

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『いやほんとごめんなさい』

｢いいって笑謝られると逆に申し訳なくなる｣

たこ焼きを手に持ちながら、また2人で歩き出す

こーちゃんはと言うと、突然｢用事がある｣とか言い出して帰ってしまった

でも私は見逃さなかった

満面の笑みでウィンクをしていた所を

気を利かしてくれたつもりなんだろうけど、一方の私は緊張してしょうがない

｢ちょっと座ろうか｣

屋台から少し離れた2人がけのベンチに促され、そこへ座った

体を1cmでも動かそうものなら肩がぶつかってしまう、そんな距離

息が止まりそう

｢俺は前から知ってた
晃一のいとこがAさんだって事
聞いたのは最近なんだけどね、流石にびっくりした｣

『そうだったんですね』

｢晃一とは中学が同じで、1番気の合うやつだった
最初、歳上か!?って思ったけど、その分中身がやんちゃでさ、笑うとうるさいし関西弁キツいし笑｣

『分かる気がします
やっぱりこーちゃんはどこにいてもこーちゃんなんですね』

私が知らなかった2人の過去

世界が狭すぎるのは嫌だけど、こういう繋がりはなんか嬉しいな

｢嬉しいな
親友のいとこがAさんで、しかも俺の教え子で
奇跡だって思ったよね、つくづく離したくなくなる｣

小笠原は綺麗な横顔をしている

うっとりしてしまいそうなぐらい、月明かりに照らされる横顔は儚い

私も、奇妙だけど奇跡みたいに思ってる

私だって離したくない

｢今考えてる事も同じだったりしてね？笑｣

キュッ

なんだこの、肺のもっと奥の方が締め付けられる感覚は

おまけに心音が脳内にこだましてる

私の顔はきっと、熟れたりんごみたいに違いない

どうしよう、小笠原が見られない

｢なんて、そんな訳ないか｣

『一緒です！私も、一緒なんです』

｢え？｣

先生はきっと鳩が豆鉄砲喰らったような顔してる

私には分かる

驚愕してる、私に

でも、私も同じだって知ってほしいから

｢同じなの？｣

『そうです』

誤解なんてされたくない

すれ違うとかそんなめんどくさい事になりたくない

私も先生と同じ事考えてる、ただそれだけ

｢こっち向いて｣

『向けない』

｢お願い｣

『やです』

｢じゃないとキスするよ｣

えっ

私はハッとして小笠原の方を見た

そんな小笠原は

｢やっとこっち見た｣

なぜだか泣きそうな顔をして私を見ていた

*