ドナドナ (ページ2)

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第二章「消えた母」ページ2

懐かしき牧場に着いた牡牛は、子牛の頃、母と一緒に越えられず脱走できなかった電気柵、子牛の体に消えない傷を残した電気柵を、当時とは違う頑強な肉体と不屈の精神で、電気柵に突進し牧場に侵入した。子牛の頃、脱出をしたくて何度も体をぶつけ壊せなかった電気柵を簡単に壊し、牧場に侵入した。皮肉なものである。

牧場に鳴り響く電気柵の異常を知らせるサイレン、それを聞いた牧場の人間が、納屋の前に待ち構えていた。子牛の自分を世話してくれていた少女が散弾銃を持ってこちらに構えている。その少女はもう少女ではなく牧場を守る女主人になっていた。

逃げるわけにはいかない。女主人が守る納屋の中には、待ち望んだ母がいる。散弾銃で狙いをつけている女主人は、今にも突進しそうな牡牛の古傷を見て、侵入した牡牛が雌牛狙いの荒牛でないことを悟った。牡牛の古傷を徹夜で看病していたのは、女主人だった。

女主人は、覚えていた、いや、忘れるはずがない、前に立つ頑強な牡牛は、初めて父に言われてお産を手伝い、育て、愛した子牛だった。出荷される前日、少女は、父に頼んで泣きながら出荷を拒んだ。だがこれが家業の宿命だと厳格な父に悟られ出荷を手伝った。荷馬車に乗るのを拒否する子牛を、少女は、鞭で叩き、徹夜で看病した古傷から血がにじみ泣いている子牛を、荷馬車に押し込んだ、子牛の乗った荷馬車の悲報を聞いた少女の目は、もう涙に濡れておらず、牧場を守る女主人の目になっていた。

宿命の再会を果たした元少女の女主人と、立派な牡牛となった元子牛。
もう愛した牡牛を傷つけたくない女主人は、散弾銃を感情的に空に撃ち牡牛に警告する。お前の母は、もういない。別の牧場に売ったと、

次回、第三章「母を追う」

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