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『低脳なナンパなら他を当たりなさいよ』
この豚が。と語尾に付け足したいのを抑えて蔑みながら下手くそなナンパにそう言い切ってやれば、豚男はギョッとした顔をしながら慌てて否定してきた。
「ち、違う違う!オレはただ初めてくる受験者が緊張しないようにと思って話しかけてるんだ!」
『ふーん。でも、あいにくとあたしは緊張なんてしてないから話し相手は不要よ。違う新人を探せば?それじゃ』
「ま、まってくれ!ならせめて、お近づきの印にこのジュースをあげるよ!」
ゴソゴソとカバンをあさり、差し出された缶ジュース。見た目は既製品のラベルだけれど、どう考えても怪しさ百点満点。それに、今までの経験上こういった輩(やから)はなにか薬を入れていたりする可能性が高い。
それこそここはハンター試験会場、そんなことがあってもなんら不思議じゃないしね。
ニコニコしている豚男の顔を眺めながらふいに、思いつく。
(ちょっと……カマかけてみようかしら)
『……あら、仮にもここはハンター試験会場よ?受験者全員が敵と言っても過言じゃないそんな場所で、試験開始前といえど、わざわざお近づきの印にとジュースを渡すなんて、アンタ……随分とお優しいのねえ?』
「は、はは!だろ?ここに来るまでにみんな苦労してくるだろうから疲れてると思ってな!」
『へえー。あたしなら他人なんてどうでもいいからそんなこと出来ないから、凄いと思うわ。……ああでも、他人を蹴落とすために、ジュースの中に薬でも入れて渡すっていうなら、するかもね?』
「ぅえっ!?」
見るからに冷や汗をかいてる豚男の顔を見て、ジュースになにか入れてることに確信を得る。
(こうも簡単にカマにかかるなんて)
わかり易すぎるこの豚男に内心少しだけ呆れる。もう少しバレない表情を作る努力をしなさいよ。
多分こういったことを常習的に行ってきたのだろう。最初に話しかけてきた様子から随分と手慣れてたもの。ずる賢いことには頭が回るのね。
別にこの罠が悪い訳では無いし、むしろ少しでも自分が試験に残るためならこういう手も有りだと思う。否定はしないし、何もしないよりは良いとも思けれど。
(でも、そんな低レベルな罠をあたしに仕掛けてくるなんて……いい度胸してんじゃない)
『丁度喉も乾いていたし、それ、くれるならもらっていいかしら?』
手渡されたそれを受け取りながら、自然と口角が上がっていくのを感じた。
〆
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RT - とても面白かったです!更新頑張ってください! (2018年7月30日 14時) (レス) id: da0e7ea281 (このIDを非表示/違反報告)
氣屡我(プロフ) - 次の更新がとても楽しみです!これからも頑張ってください! (2018年6月5日 10時) (レス) id: b312e3c65c (このIDを非表示/違反報告)
byohi60(プロフ) - 主人公ちゃんの雰囲気がすごい好きです。頑張ってください。 (2018年6月4日 19時) (レス) id: d50e1836e3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっきー(プロフ) - とっても面白いです!楽しみに更新待ってます!頑張ってください! (2018年6月3日 23時) (レス) id: 786a7761a4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっきー(プロフ) - 紅葉さん» 多分設定の時にイラストを貼っていたのでイラストのキーワードが出てるんだと思います! (2018年6月3日 23時) (レス) id: 786a7761a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:EMMA | 作成日時:2018年5月31日 16時