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嘘偽りを言うことは簡単だろう。自分の保身のため、または相手のことを思って。理由は何であれど、人は人生で何回も嘘をつくものだ。其れは、些細なことかもしれないし、逆に大きなことかもしれない。
だが、知らぬが仏という言葉があるくらいだし、桜士郎は後者の理由については許容の範囲内としている。



しかし、あまねのように本当に心配そうな顔をして自分と接してくれる人に、その後者の理由は通用するのだろうか。
ここで、桜士郎が問題無いと答えるなら、あまねも幾分かは気が楽だろう。だが、嘘とはいつかはバレるもの。その場限りの嘘ではあまねにもいつか桜士郎の嘘はバレてしまう。


悩んだ末、桜士郎は選択した。



「……問題ありません。大分気持ちの整理もつきました」


「…………そうですか」


桜士郎は表情一つ変えずに返答する。
恐らく、あまねは桜士郎が嘘をついていることに気づいている。いくら演技力を磨いても、或いは歌舞伎役者でさえも、あまねの前では無と化すだろう。


いつも、夫の容体に些細な変化がないか注意深く観察しているのだ。こんなこと造作もない。
でも、そのことを追求しないのは桜士郎の気持ちを思ってのことだろう。

耀哉が祝言を上げたときから、あまねが妻として夫を支える姿を、桜士郎はこの目で見てきたのだ。
耀哉だけでなく、あまねも優しいことは重々承知している。


だから桜士郎は見栄を張った。嘘をついた訳ではなく、強がったのだ。
彼は、出来るだけ人に弱さを見せたくない。また、見せるべきではないと思っていた。


見せたところで、それは相手に迷惑をかけるだけであるのだから。


「ここで少々お待ち下さい。当主を呼んで参ります」


桜士郎が通されたのは、いつも柱合会議が行われる趣深い開けた場所だった。


────変わっていない。あの時からずっと、変わらないままだ。
それが妙に安心感を与えてくれて、加えて小鳥たちの(さえず)りが平和を感じさせてくる。とても心地良い空間であった。


じゃり、じゃり。


玉砂利の音が聞こえて来る。桜士郎は不思議に思って音の方を見てみると────


「久しぶりだね、桜士郎。会うのは二年振り、くらいかな?」


あまねに支えられた、産屋敷 耀哉が立っていた。




───────────────

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設定タグ:鬼滅の刃 , 胡蝶しのぶ , 男主   
作品ジャンル:恋愛
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天霧(プロフ) - とても面白かったです。ハールメンで見させて貰います。 (2021年9月26日 1時) (レス) @page17 id: 8490818b21 (このIDを非表示/違反報告)
しとは(プロフ) - いおりさん» 前作からと長々この作品をご閲覧頂きありがとうございます!部活の大会や模試などが立て込み、中々更新出来ずにすみません。ですが、これからも応援して頂けると嬉しいです。よろしくお願いします! (2020年1月16日 7時) (レス) id: 076c798201 (このIDを非表示/違反報告)
いおり - 前作から来ました。今作もすっごい面白い、、、。これからもお体に気をつけて更新頑張ってください。楽しみに待ってます。 (2020年1月13日 17時) (レス) id: 74a65ddbfb (このIDを非表示/違反報告)
しとは(プロフ) - そう言って貰えると、良かったぁってなります。ありがとうございます!了解です。前作は残していく方向で行きます!更新頑張ります! (2020年1月5日 11時) (レス) id: 076c798201 (このIDを非表示/違反報告)
Sara.(プロフ) - 面白すぎて一目惚れしました。大好きです前作残して欲しいですす更新頑張って下さいぃぃ! (2020年1月4日 23時) (レス) id: 37e203d48e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しとは | 作成日時:2019年12月12日 1時

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