【零】 孤独な剣士 ページ2
冷たい夜風が、ヒュウッと寂しげな音を立て、深緑に色づき始めた葉たちを連れ去って行く。
辺りの桜は全て散り、多少の喪失感はあるものの、過ごしやすい季節だと思っていたのだが……と彼は首に巻いているマフラーに顔を
雲に隠れていた月が顔を出し、月明かりが葉の隙間を縫って、
ぼんやりとした明かりを背中に受け、『滅』の一文字と共に、彼が暗闇の中から姿を現した。
すらっとした
それとは対極に、ガラス細工で作られたようなとても澄んだ漆黒の瞳。対極に位置する関係であり、通常は交わらないであろうその色は見事に調和していて、常人が思わず見とれてしまうほどには美しいと判断できる。
それはまるで、一つ一つが精巧に作られた人形のようで、儚い雰囲気を身に纏っていた。
「カァッ!! カァア!!
彼の鎹鴉が指令を叫んでいるのを余所に、彼──
恐らくは近くの集落の子供だろう。一人行方が知れないと聞いている。
少年の左手には血のついた一輪の花。これはここら辺では大変珍しい薬草だ。多分彼が母親に────。
先程首を落とした鬼は子供を好んで食べるようで、子供は甘くて美味いなどとほざいていた。それに子供が絶望する顔が好きなのだとも。
…………まったく、ヘドが出る。馬鹿も休み休み言え。
やはり彼女の言う、鬼と友好を築くなど絵空事に過ぎないのだろう。人を食事としか見ていないアイツらが、俺らと仲良くなんてもう吐き気すら通り越して笑えてくる。
鬼が人を喰らわない限りは仲良くなんて夢のまた夢だろうし、そんなこと万に一つ、いや億に一つもありはしない。断言する。
何故なら、入隊してから十年立つ俺でさえ、そんな鬼は遭ったことどころか、見たことも聞いたこともないのだから。
桜士郎は一息吐いてから、星の輝く夜空を見上げた。
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天霧(プロフ) - とても面白かったです。ハールメンで見させて貰います。 (2021年9月26日 1時) (レス) @page17 id: 8490818b21 (このIDを非表示/違反報告)
しとは(プロフ) - いおりさん» 前作からと長々この作品をご閲覧頂きありがとうございます!部活の大会や模試などが立て込み、中々更新出来ずにすみません。ですが、これからも応援して頂けると嬉しいです。よろしくお願いします! (2020年1月16日 7時) (レス) id: 076c798201 (このIDを非表示/違反報告)
いおり - 前作から来ました。今作もすっごい面白い、、、。これからもお体に気をつけて更新頑張ってください。楽しみに待ってます。 (2020年1月13日 17時) (レス) id: 74a65ddbfb (このIDを非表示/違反報告)
しとは(プロフ) - そう言って貰えると、良かったぁってなります。ありがとうございます!了解です。前作は残していく方向で行きます!更新頑張ります! (2020年1月5日 11時) (レス) id: 076c798201 (このIDを非表示/違反報告)
Sara.(プロフ) - 面白すぎて一目惚れしました。大好きです前作残して欲しいですす更新頑張って下さいぃぃ! (2020年1月4日 23時) (レス) id: 37e203d48e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しとは | 作成日時:2019年12月12日 1時