Smile .【黒】 (ページ12)

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知らなかった事実に、驚きを隠せない。

目黒「親御さんと弟さんが…？」

楓「そう」

一言だけ返して、また麦茶を飲む楓さん。

コトっとテーブルにコップを置いて話を続けた。

楓「Aと4人で車で旅行に行ってたの。
その時に、ダンプと衝突してね。Aは一命を
取り留めたけど、親と弟は無理だった」

指でトントンとテーブルを叩きながら話す楓さんを
見て、ゴクッと唾を飲み込む。

楓「その後から、私がAの親代わりで
育ててるのよ」

そんな過去があったなんて。知らなかった。

俺は、Aのことを何一つ知らなかったんだ。

そう思うと、ギュッと拳に力が入った。

.

.

『……目黒くん？』

彼女の声でハッとした。

気づくと、リビングのドアから覗き込むように
こちらを見ていたAがいた。

楓「目黒くんが課題を持ってきてくれたみたいよ」

『そうなんだ。ありがとう』

ダボッとした部屋着を着て、体調が優れないからか、
いつもとは違った表情をしているA。

俺は、バックに入っている課題を取り出して渡した。