弟です。 ページ9
「え……いいんですか？」
二人は遠慮がちになっている。
それもそうだ。
大人とはいえ、相手は一人。
そんな二人に烏間先生はかすりでもすれば今日の授業は終わりでいい、といった。
「え、えーと……そんじゃ。」
引き気味に、でもそれなりに速いスピードで磯貝がナイフを突き出した。
俺だったらよけれないな、なんて思いながら攻撃を見ている。
だが、その攻撃はいとも簡単にかわされてしまった。
慌てて前原もナイフを振る。
だが、その攻撃も受け流された。
二人は同時にナイフを振るが、烏間先生は全て避けるか受け流している。
すごい。
素直にそう思った。
最期に前原と磯貝の手首をつかみ、地面に転ばせると、烏間先生はこういった。
「俺に当たらないようではマッハ２０の奴に当たる確率の低さがわかるだろう。
見ろ、今の攻防の間に奴は砂場に大阪城を造った上に着替えて茶までたてている。」
烏間先生の指さす先にはお茶を飲んでニヤニヤ笑いながらこちらを見る殺せんせー。
うん、腹立つな。
暗殺に必要な基礎を俺から教えさせてもらう、と烏間先生が言ったところでチャイムが鳴った。
俺も帰ろう。
そう思って校舎に足を向けた……が。
「阿須汰ー！」
……変な奴がきた。
俺の横でさっきの攻防の感想をキラキラと語っている。
それだけならいい。
【それだけ】なら。
だが、次に出てくるであろう言葉を俺は大体わかる。
一応双子だからな……。
「と、言うことで……放課後練習台になって！」
「嫌だ。」
即答すればガーンという効果音が付きそうな勢いで落ち込む姉。
だが、どれだけ頼まれようが嫌な物は嫌だ。
負けるとわかっていう勝負を自ら挑む馬鹿ではない。
それに、俺よりも他の奴の方がいい練習になる。
「前原とか磯貝とやればいいだろ。」
「う〜前原ー磯貝ー！」
阿須汰が冷たいー、と言いながら二人の元へ走っていく紫陽花。
そう、それでいい。
お前は俺以外の奴と楽しくやってりゃいいんだよ。
６時間目は小テストだったな……とっとと着替えて勉強しよ。
そう思ってもう一度グラウンドに背を向けた。
振り返って見えたのは赤い髪に赤い眼をしたあいつ。
＿＿＿赤羽業だ。
いちご煮オレを片手にこちらを見下ろしている。
確か続けざまに暴力沙汰で停学くらってたな。
「よー阿須汰君じゃん、久しぶり。」
路地裏でたまたま会っただけだろ、と思いながらも声には出さず、返事も返さぬまま彼の横を通り過ぎた。
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作者名：相良 夜恵 x他1人 | 作成日時：2017年4月19日 22時
