弟です。 ページ7
先生の前まで来た渚は、隠し持っていたナイフを振った。
それはあっけなくとめられる。
だが、本当の攻撃はそれではないことを俺は知っている。
ふわりと先生に抱き着いた渚の首には＿＿＿ＢＢ弾グレネード。
横を見ると阿保面で渚を見つめる姉の向こうで寺坂がボタンを取り出していた。
押した瞬間、ＢＢ弾が教室中に飛び散った。
それもとんでもない速さだ。
殺った。
そう思ったのだろう、寺坂達は歓喜の声をあげて教室の前へ出た。
茅野さんを始めさまざまな人が渚を心配する中、俺は一人落胆と安心におぼれていた。
渚は無傷だ。
落ち着いてよく見れば渚には薄い膜のようなものがかぶせてある。
それが何かは分からないがあの先生がかぶせたものだろう。
そして、そんなことをする余裕があるのならあの先生も無事だ。
失敗か……。
一つため息をつき、前を見るとどうやら寺坂達もそれに気づいたようだ。
天井から聞こえる声のほうへ目線をうつすと、そこに居たのはあの先生。
だが、顔色はいつもの黄色ではなく、黒。
成程、『怒』ってわけね。
一度教室から出て戻ってきた先生の手にあるのはたくさんの表札。
勿論、【夏藤】という文字が黄色いユリで装飾された表札もあった。
それは先生からの警告。
迷惑なんだよ！と大声でどなり散らす寺坂にさっきとは打って変わって丸印を先生は顔に浮かべた。
「迷惑なんてとんでもない。
アイディア自体はとてもよかった。
特に渚君。
君の体運びはとても自然で完璧です。
先生は見事にすきを突かれました。」
触手を渚君の頭に置いてそういう先生。
「ただし！
寺坂君達は渚君を、渚君は自分を大切にしなかった。
そんな生徒に暗殺をする資格はありません。
人に笑顔で胸を張れる暗殺をしましょう！
君たち全員それができる力を秘めた有能な暗殺者だ。
ターゲットである先生からのアドバイスです。」
マッハ２０で怒られて
うねる触手で褒められる。
この教育は他の生徒から見たら“異常”な教育なのだろう。
といっても異常なのは＿＿この世界だと思うが。
『阿須汰、一緒にドッジしよーぜ！』
『阿須汰君、この本面白いから読んでみて！』
『阿須汰、宿題わかんねーから教えてくれよー！』
『阿須汰ー！』
『阿須汰くーん！』
『……阿須汰はすごいね。』
『阿須汰って何考えてるかわかんないよな。』
『なんか無愛想だよね。』
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作者名：相良 夜恵 x他1人 | 作成日時：2017年4月19日 22時
